賃貸をトラブルなく上手にキャンセルするための全知識|状況別にプロが解説!
「賃貸ってキャンセルできるの?」「賃貸でキャンセル料ってかかる?」など、賃貸のキャンセルに関して疑問に思っていませんか?
賃貸の場合、契約する前であればいつでもキャンセルでき、どんな理由でもキャンセル料などは一切かかりません。ただし、契約のあとになると、高額な費用を請求されるので、注意が必要です。
このページでは、大手不動産会社に5年勤務し、現在も賃貸部門で働く筆者が、以下の5つのことをご紹介します。
すべて読めば、キャンセルするときの注意点や、トラブルが発生したときの対処法まで知ることができるので、いざという時もスムーズに対応できるようになるでしょう。
目次
1.賃貸のキャンセルは簡単にできる?
「すでに申し込みをしてる」「契約する日まで決まっている」など、さまざまな状況がありますが、どんなときでも契約書に印鑑を押す前であれば、簡単にキャンセルすることができます。
1-1.キャンセル料はかからないの?
賃貸をキャンセルするときに、キャンセル料は一切かかりません。
不動産会社によっては、「違約金」や「迷惑料」など、さまざまな理由をつけて請求してきますが、払う必要はないです。
不動産業界では、契約する前に違約金や迷惑料を請求する会社は「悪徳な不動産会社」と位置付けており、すぐに不動産協会まで相談することを促しているぐらいです。
1-2.すでに支払っている申込金も必ず返金される
申込金は、物件により有無が異なりますが、部屋を借りる意思表示のために預けるお金です。
上の図でいうと、⑤の段階で支払うことが多いですが、支払った申込金も必ず返金されます。
なぜなら、契約前にキャンセルしたのであれば、不動産会社は申込金の返金を拒否してはいけないと、法律で決められているからです。
つまり、どんな理由であろうと、申込金は預かっているだけのお金なので「契約しなかったら必ず返しましょう」と国も決めているのです。
1-3.契約書に印鑑を押したらキャンセルできない
契約が成立したあとは、未入居だとしても、部屋を退去するときと同じように、契約を「解除(解約)」する必要があります。
そうなると、すでに支払った申込金や契約金などは、返金されないうえ、追加で請求される恐れもあるので、4章「契約したあとのキャンセルはどうなるの?」で詳しく解説します。
とにかく契約する前のキャンセルが重要
キャンセルできるかどうかについて説明してきましたが、とにかく、契約する前にキャンセルすれば費用もかかりません。
そして、キャンセルしたあとに別の物件を探すときは、しっかりとながれを踏んでいかないと、無駄なキャンセルをすることになるので、5章「基本的な物件探しから申し込みまでのながれ」を確認しましょう。
2.状況別!上手に申し込みをキャンセルする方法
家庭や仕事の都合で仕方なく..というときは素直に営業マンに電話などで「キャンセルしたい」と正直に伝えればいいですが、下記の場合は言い方に困るかと思います。
- 営業マンに強引に申し込みさせられた
- 他にいい物件が見つかった
- 他社で同じ物件の仲介手数料が安かった
- 解約の関係ですぐに引っ越しできなくなった
そんなときのために、状況にあった最適なキャンセル方法を解説していきます。
2-1.営業マンに強引に申し込みさせられたとき
営業マンに連絡するのではなく、不動産会社に連絡して<名前・申し込んだ物件名・号室>を伝えて「キャンセルお願いします。」と言うだけで大丈夫です。
理由を聞かれたときは、「強引に申し込みさせられた」と言っても問題ありません。
担当者に代わりますと言われても、「結構です」と伝え、その電話でキャンセルの手続きを取ってもらいましょう。
電話しにくい人はメールでもOK
キャンセルのときは、メールでも対処できるので、以下のテンプレートを不動産会社の問合せフォームから送りましょう。
キャンセル定型文
●●不動産 担当者様
問合せフォームより失礼します。
現在、●●物件の●●●号室を申し込んでる●●と申します。
突然の連絡で恐縮ですが、申し込みのキャンセル手続きをしていただきたく連絡しました。
理由としては、御社の●●さんに物件を案内してもらい、きちんと検討したかったのですが、「いま申し込まないとすぐ満室になる」と焦らされ、半ば強引に申し込みすることになってしまった為です。
断れずに申し込んだ私にも非があるので、大変申し訳ないのですが、今回は一度キャンセルの手続きをお願い致します。
また、●●さんとは今後、連絡を取りたくないので、回答いただくときは下記アドレス宛てに、別の担当者の方から返信いただければ幸いです。
アドレス:●●●●●●●●●@gmail.com
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い致します。
無理やり申し込みを迫ってくる営業マンだと、電話やメールでも新たな物件の提案を、強引にしてくる可能性もあるので、できる限り関わらずにキャンセルすることが望ましいでしょう。
2-2.他にいい物件が見つかったとき
担当者に、他にいい物件が見つかったと、正直に伝えてキャンセルすることが一番ですが、このときに「御社でこの物件を新たに申し込みことはできますか?」と聞いてみましょう。
新たに希望してる物件も対応できるなら、申し込みの手続きもスムーズなうえ、いい営業マンであれば喜んで対応してくれるはずです。
逆に、対応が悪くなったりするようなことがあれば、新たな不動産会社で申し込みした方がいいでしょう。
2-3.他社で同じ物件の仲介手数料が安かった
この状況のときは、仲介手数料を他社と同じ金額にしてくれることも多いので、交渉ベースで以下のように伝えてみましょう。
●●不動産が、仲介手数料●●円で対応してくれる言ってるのですが、御社で契約する場合も同額になりますか?
同額にならないなら、申し訳ないですが一度キャンセルして、●●不動産で改めて申し込みしようと考えています。
仲介手数料は初期費用の中でも高額なお金のひとつなので、少しでも安いところで契約することが望ましいでしょう。
また、このようなことは賃貸業界で頻繁に起こることなので、気負いせず交渉して、断られたらキャンセルしましょう。
2-4.解約の関係ですぐに引越しできなくなった
解約予告の関係上、いま住んでる家の賃料と引越し先の賃料が2重払いになることが多々あります。
この状況のときは、決められた期間の家賃がタダになる、フリーレントの交渉を以下のようにしてみましょう。
いま住んでる家の賃料と、引越し先の賃料が、●●日分2重払いになってしまうので、可能であれば●●日分のフリーレントをつけてもらえないでしょうか?
難しければ、すぐに引越すことができないため、申し訳ないですが一度キャンセルお願いします。
改めて適切なタイミングで申込みさせてもらいます。
入居したい意思が強いことを伝えれば、交渉が成功しやすいです。
断られたときは、無駄なお金を払わないためにも気にせずキャンセルして、タイミングが合うときに改めて申し込みしましょう。
3.トラブルが発生したときの対処法
不動産会社は、さまざまな理由をつけて返金を拒みます。よくあるケースだと、口頭で「キャンセルしたら違約金としてキャンセル料が必要」などと言われます。
このとき、言われるがまま払ってしまう人もいて、非常に多くのトラブルが発生しています。
今後、同じようなトラブルを防ぐためにも、この章で説明する内容を事前に把握しておきましょう。
3-1.支払いを求められたら請求書を要求する
キャンセル料の支払いを求められたら、まずは拒否することが重要ですが、その次にやる事として、請求書を要求します。
要求する理由を聞かれたら、「不動産協会に確認して、支払う必要があると言われれば支払います」と伝えましょう。
このように伝えれば、違法な請求だと不動産会社がわかっているので、発行されることはないでしょう。 万が一発行されたときは、このあと紹介する協会に請求書を提出すれば、業者は罰せられます。
3-2.支払ったお金が返金されないとき
契約前にもかかわらず、すでに支払っている申込金や契約金が返金されないときは、下記どちらかの窓口に相談することによって、すべて解決されます。
全国の不動産会社が、上記のどちらかに加盟していることが多く、返金に応じなかったり悪質な請求をしてくる不動産会社は、除名処分されることもあるので、非常に効果的です。
全国宅地建物取引業協会連合会
「全国宅地建物取引業協会連合会」は、不動産業者の約80%が加入する国内最大の保証協会です。
全国に協会が設置されているので、最寄りの窓口に出向いて相談することもできますし、電話での相談も無料で受け付けています。(各都道府県の窓口一覧)
まずは、代表窓口(03-5821-8113)に電話して、トラブル先の不動産会社名を伝え、加入しているか確認してみましょう。
もし加入していないときは、続けて下の協会に問い合わせてみましょう。
全日本不動産協会
「全日本不動産協会」は、建設大臣より設立許可を受けた、全国に本部を持つ不動産業者の保証協会です。
こちらの協会では、加入している会員情報を住所から検索できるので、トラブル先の不動産会社が加入しているか調べてみましょう。(会員検索ページ)
そして、加入していることが判明したら、会社名とトラブル内容を伝えれば、解決策を提案してくれます。
ただし、同じ案件での相談は原則1回だけなので、要件をまとめてから問い合わせをするようにしましょう。
4.契約したあとのキャンセルはどうなるの?
1章でも伝えましたが、契約書に印鑑を押した時点で、契約が成立したことになるので、契約を解除する必要があります。
また、不動産の賃貸では、契約したあとの一定期間、無条件で契約の解除をできる「クーリング・オフ制度」が適用外となっています。
そのため、契約のあとにキャンセルすることはできず、高額な請求をされる可能性もあるので、詳しく解説します。
4-1.絶対に返金されないお金
すでに支払っている契約金の項目で、絶対に返金されないお金は以下の3つです。
- 礼金
- 仲介手数料
- 鍵交換費用
礼金
部屋を貸してくれるお礼として、貸主に支払うお金です。
可能性は限りなく低いですが、心の広い貸主であれば、多少返金に応じてくれるかもしれないので、一度相談してみましょう。
仲介手数料
部屋探しから契約までの手伝いをしてくれた、サービスの対価として不動産会社に支払うお金です。
契約まで済ませているので、絶対に返金されないでしょう。
鍵交換費用
契約が完了するまでに、新しい鍵に交換されていることが一般的なので、こちらも返金されることはないでしょう。
4-2.追加で請求される恐れがあるお金
短期解約違約金が、設定されているときは、追加で請求される可能性が高いです。
多くの場合が、「1年以内の解約で家賃1ヶ月分を違約金として支払う」と決められています。
解約予告期間にも注意する
物件を解約するときは、1ヶ月前に希望して1ヶ月後に退去するか、1ヶ月分の家賃を払ってすぐに退去するかに分かれます。
契約したあとすぐに解約するときは、1ヶ月分の家賃を求められる確率が高く、場合によっては短期解約違約金と合わせて請求されることもあるので、契約内容を必ず確認しましょう。
4-3.返金される可能性が高いお金
すでに支払っているお金の中で、契約したあとにキャンセルした場合に返金される可能性があるのは以下の2つです。
- 敷金
- 火災保険料
どちらも未入居ということが、前提になりますので、契約した直後にキャンセルしたケースでお考えください。
敷金
敷金は担保として預けるお金で、未入居であれば敷金を使われることがないため、返金されるでしょう。
ただし、数日間でも入居してから解約するときは、ハウスクリーニング費用を差し引かれる可能性もあるので、注意が必要です。
火災保険料
火災保険料は貸主ではなく、保険会社に返金の申請をすれば返ってくる可能性が高いです。
こちらも敷金同様に、数日間でも入居していたら、全額返金されないか、日割り計算した差額分だけ返ってくる形となります。
5.基本的な物件探しから申し込みまでのながれ
賃貸物件は、気に入った物件の申し込みから入居するまでの日数は、平均して3週間前後なので、引っ越しできる日から逆算して、物件探しを始めましょう。
①まずは物件探しから始めましょう
物件探しは店舗に行って探すより、インターネットで探したほうが断然効率がいいです。
なぜなら、「suumo」や「HOME’S」などのポータルサイトは、各不動産会社が自社で扱う物件をまとめて掲載しているので、数多くの物件の中から探せるからです。
収入と家賃のバランスを考えて物件を探しましょう
入居するには審査が必要で、1番重要なことは家賃と収入のバランスが取れているかです。
収入が基準を下回ると、審査に通る確率も下がるので、事前に把握してから内覧する物件を決めましょう。
収入の基準表(一般的に家賃の1/3が相場)
本人の年収 | 家賃上限の目安 |
200万円 | 約5.6万円 |
250万円 | 約6.9万円 |
350万円 | 約9.7万円 |
500万円 | 約13.9万円 |
700万円 | 約19.5万円 |
1000万円 | 約27.8万円 |
②希望の物件が見つかったらすぐに内覧に行きましょう
条件のいい物件は、他のひとも同じように気に入ってる可能性があり、すぐに募集終了となってしまうので、できる限り早い段階で内覧の予約を取りましょう。
対応が早い不動産会社だと、問い合わせをしてから数時間後に、案内してくれることも多いので、気にすることなく「今日見に行きたいです!」と伝えましょう。
③条件に合う物件だったら申し込みをしましょう
条件に合う物件が見つかったら、なるべく早めに入居申し込み書を提出しましょう。
ただ、場合によっては、営業マンから強引に勧められ、不本意な申し込みをさせられるケースも多いので、注意が必要です。
申し込み書に記入する内容
申し込み書に記入する本人情報は以下の通りです。
本人の個人情報 | 本人の勤務先に関する情報 | |
申込書に記入する情報 |
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|
④必要書類を準備して提出しましょう
申し込み書を提出してから、2~3日以内を目処に、審査で必要な以下の書類を不動産会社に提出します。
ただ、必要書類を提出しないと審査は始まらないので、キャンセルするなら審査前の、この時点が理想的ではあります。
審査に必要な書類
身分を証明する書類 | 免許証・パスポート・保険証 ※どれかのコピー |
収入を証明する書類 | 源泉徴収票 ・ 給与明細3ヶ月分 ※どちらかのコピー |
⑤申込金が必要なら必要書類を提出する日に払いましょう
申込金を求められる物件のときは、必要書類を提出したあと、同日に併せて支払うことが望ましいです。
不動産会社によっては、申込書を提出した日に支払いを求められるケースもありますが、「今は手持ちがないので、必要書類を出すタイミングで支払います」と伝えましょう。
そして、申込金を支払ったら「預かり証」を必ず発行してもらいましょう。また、発行してもらうときに、必ず記載してもらうに希望する内容は、以下の通りです。
- 受領した日付
- 返還を希望すれば返還される旨
- 預かり金の目的
- 不動産会社・担当者の詳細と印鑑
預かり証の例 |
預かり証がないとキャンセルしたときに危険
万が一、担当者に直接支払い、後日になって、その担当者が退職してしまったら、何も証拠が残っていません。
そうならないために、必ず預かり証を発行してもらい、返金されるまでは自身で保管しておきましょう。
6.まとめ
賃貸のキャンセルについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
とにかく、どんな物件でも、契約書に印鑑を押す前であれば、一切費用をかけずにキャンセルできるということを覚えておきましょう。
また、すでに支払っている申込金も必ず返金されるので、不動産会社の言われるがままに支払わないようにしてください。
トラブルが起きたら、すぐに下記の協会まで連絡してみましょう。
あなたが賃貸を検討しているとき、トラブルなくキャンセルできることを陰ながら願っています。