騙されるな!不動産業者が教える「敷金」を最大限返還させるための全知識
「そもそも敷金って返還されるものなの?」「不当に引かれてる分は、どうやって返してもらえばいいの?」など、敷金は返還されるのか、また、どうやって返還してもらえばいいのか気になっていませんか?
敷金は普通の使い方をしていれば問題なく返ってくるものですが、悪意ある貸し手によって減らされたり、返ってこないものとして扱われるケースが多発しています。
このページでは、不動産の賃貸仲介業で働いている筆者が、下記の流れで、敷金は返ってくるのか、どこまで返ってくるのか、どうやって返してもらうかを解説していきます。
すべて読めば、敷金に関して、国も認める正しい考え方がわかり、退去時に最大限の敷金の返還を受けられます。
目次
1. 国にも認められている、敷金の基本的な考え方
敷金は返ってこないもの、と諦めている方もいるかもしれませんが、基本的に普通に使っていれば全額返ってくるものです。
国も「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で、貸す側が搾取することのないよう、明確な基準を明記しています。
1-1. 敷金=礼金と違って返ってくるもの
そもそも、敷金は礼金と違い、返ってくる前提で、原状回復の費用として入居時に預けるものです。
そのため、あなたが原状回復不要な状態で部屋を返すことができれば、満額が返ってくるのが当たり前なのです。
「敷金返還請求権」と呼ばれる敷金を返してもらうための権利も借主にはあります。
通常、退去した後、精算書などが送られてきて、その後口座などに入金されます。退去後1~2ヶ月後には返還されます。
1-2. 原状回復=完全にもとに戻す訳ではない
返還額の金額を左右する「原状回復」は、普通に使っていて古くなったものを借りた状態の時に戻せ、という訳ではありません。
国交相もガイドラインで明記していて、原状回復自体も、借りた当時の状態で戻すことではなく、あくまでも借りる人の故意・過失でによるものだけでいいと明記しています。
以下のように、ガイドラインでは通常の使用によるダメージ(古くなったことによる劣化など)に関しては大家が負担することが明確化されています。
借主が負担するべきなのは借主側の故意過失によって損なわれた建物価値だけで、普通に使っていたことによる建物の傷みなどは大家側の負担になると、国も基準を出しているのです。
1-3. ただし、どこまでが「原状回復」なのかで揉める
ただし、返すのか、返さないのか、いくら返すのかで揉めるケースが多く、国民生活センターにも下記のように毎年多くの相談が寄せられています。
国民生活センター(全国消費生活情報ネットワークシステム)へ寄せられた相談件数
- 2018年:12,500件
- 2019年:11,799件
- 2020年:12,061件
上記ガイドラインもそういった背景から作られました。
例えば、通常使用のダメージでも原状回復費用を借主に求めてきたり、少しのダメージで多額の請求をしてくる大家もいます。
そのため、何を借主が負担すべきで、何は負担しなくていいのか、このページでしっかりと解説しますので、返してもらうべき敷金は全額返還してもらいましょう!
2. 項目別!返ってくる敷金と返ってこない敷金
では、項目別に、何を借主が負担すべきで、どこまでは返還してもらうことができるのか見ていきましょう。
国交相のガイドラインを元にまとめましたが、論点になるのは、「普通の生活をしている範囲内でのダメージか」です。
契約書に特約などで書いていない限り、普通の生活の範囲内でのダメージ(大家が負担すべきもの)は返還が狙えます。
2-1. 床の傷みに関して負担すべきもの、しなくていいもの
フローリングや畳など、「床」に関連したものは下記のように考えます。
借主が負担すべきもの(敷金の返還は難しい) | 大家が負担すべきもの(敷金の返還は可能) |
|
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その他、次の入居者のための畳の裏返し・表替え(表面を綺麗にする作業)やフローリングのワックスがけなどは、大家さんの負担になります。
ここは揉めるケースがあるので注意しましょう。
また、下記のように通常の使用をしていても、手入れが悪く、ダメージなどが残った場合は借主の負担になります。
- カーペットに何かをこぼして、きちんと拭かなかった事によるカビやシミ
- 冷蔵庫下のサビを放置して拭いても落ちなくなった
2-2. 壁や天井の傷みに関して負担すべきもの、しなくていいもの
壁や天井に関しては下記のように考えます。
借主が負担すべきもの(敷金の返還は難しい) | 大家が負担すべきもの(敷金の返還は可能) |
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また、下記のように通常の生活をしていても、手入れが悪く、ダメージなどが残った場合は借主の負担になる可能性があります。
- 台所の油汚れ
- 結露の放置によるカビやシミ
- 貸主の所有するクーラーの水漏れを放置した事による壁の腐食
2-3. 建具(ふすまや柱)の傷みに関して負担すべきもの、しなくていいもの
襖(ふすま)や柱などの建具に関しては下記のようになります。
借主が負担すべきもの(敷金の返還は難しい) | 大家が負担すべきもの(敷金の返還は可能) |
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その他、次の入居者のための網戸の張り替えは、破損していない限り大家さんの負担になります。
2-4. その他、負担すべきもの、しなくていいもの
その他の項目では下記のポイントです。特に、ハウスクリーニング、紛失していない鍵の取り替えは、揉めやすいので要注意です。
借主が負担すべきもの(敷金の返還は難しい) | 大家が負担すべきもの(敷金の返還は可能) |
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また、下記のように通常の使用をしていても、手入れが悪く、ダメージなどが残った場合は借主の負担になります。
- ガスコンロ置き場・換気扇等の油汚れ・すす
- 風呂・トイレ・洗面台の水垢やカビ
2-5. 契約書次第なので要注意
上記の中で、大家の負担とすべきものも、契約書の特約などで、事前に借主が負担することが明記されているケースが多いです。(東京都の方は、「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」に記載。)
ガイドラインで大家が負担すべきとなっている項目でも、契約書に書かれていると基本的に借主の負担になります。
上記をもとに、契約書も見ながらどこまで請求できるのか考えましょう。契約書に書いてあると、たとえ借り手が負担すべきでないものも、負担することになります。
3. 敷金を最大限返還させるためのポイント
ここまでが、敷金が返ってくる基準でしたが、少しでも多く敷金を返してもらうためのコツはあります。
退去直前なのか、これから契約をするところなのかですべきことは変わりますので、下記のようにフェーズに合わせてチェックしていきましょう。
- すでに退去済みの方
- 退去予定の方
- 今住んでいる賃貸物件の敷金をより多く返してほしい方
- これから契約するという方
当てはまらないものも全て読めば、今後の対策も、次の家で気をつけることもわかります。
3-1. すでに退去済みの方
まずは退去したばかりの方、退去をした物件の敷金返還額に不満がある方がすべきなのは次の3点です。
- 清算書の確認をする
- 契約書が有効かどうか確認する
- 返還するよう交渉する
ちなみに、敷金の請求は原則5年で時効で、5年以内であれば、退去して何年か経つ物件場合でも返金のチャンスはあります。
清算書の確認をする
引き渡し後、敷金の清算書が送られてくるので、しっかり確認し、引かれるべきでない項目で敷金が控除されていないか確かめましょう。
また、契約書を確認し、どこまでが借主の負担なのか(敷金から引かれるか)確かめましょう。
ハウスクリーニングなど、特約に入っていないのに請求されている場合は、管理会社などに「負担すべきではないはずだ」と交渉しましょう。
さらに、入居時のチェックリストも確認しながら、前の住人の残した損傷が請求されていないかを確認します。
修繕の範囲も確認しておく
また、請求にある修繕の範囲も適正か確認しておきましょう。例えば畳1枚しか汚していないのに、全面張り替えの請求が来ることがあります。
契約書に個別に書いてある場合もありますが、国交相のガイドラインには下記の記載がありますので、多く取られていた場合は抗議しましょう。
床 | フローリング | ㎡単位 |
畳 | 1枚単位 | |
カーペットやクッションフロア | 複数ある場合は居室全体 | |
壁や天井 | 壁のクロス | ㎡単位が好ましいが、一面分までは賃借人の負担でもやむをえない |
タバコ等のヤニ臭い | 喫煙等でクロスがヤニで変色したり臭いが付着した場合は居室全体のクリーニングを賃貸人の負担にする | |
建具・柱 | 襖 | 1枚単位 |
柱 | 1本単位 | |
その他 | 設備機器 | 補修部分、交換相当費用 |
鍵 | 補修部分(紛失の場合は、シリンダーの交換も含む) |
契約書が有効かどうか確認する
契約書の中で特約として、ハウスクリーニングなどの請求が含まれている場合も、支払う必要がない可能性もあります。
それは、特約にも下記のようなルールがあり、守られていなければ無効になるケースもあるためです。
特約について
賃貸借契約において特約を設ける場合は、以下の点に留意する必要があります。
イ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
ロ 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
ハ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること引用:国土交通省
少し難しいですが、特約が入ることには、①きちんとした理由があり、ぼったくりでない、②賃借人が負担することをきちんと理解していること、が前提です。
過去の事例なども考慮すると、下記に当てはまる請求等がきた場合は特約があっても支払いをしなくて済む/支払いを減らせるかもしれません。
- 明らかに相場より高い修繕費・クリーニング費
- クリーニング代の範囲や価格・単価が契約書に明記されておらず、口頭でも説明がなかった(どのくらいの負担なのか理解せずに契約させられた)
返還するよう交渉する
下記のような観点で、ここまでポイントで当てはまるものを電話で伝えましょう。
- 国土交通省の原状回復によるガイドラインによると払わなくてもいい〇〇の費用が含まれている
- 契約書にも私が負担することが書かれていないし、説明も受けていない
- 畳を1枚しか汚していないのに、8枚分の請求がきている
- 相場より高い金額のクリーニング費用が請求されている
- クリーニング代の範囲や価格・単価が契約書に明記されておらず、口頭でも説明がなかった
- そもそも精算書もなく、敷金を受け取っていない
ご自身でも事前に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認し、交渉のネタになりそうな箇所を集めておくと効果的です。
話の中で断られそうになった場合は「法的手段も検討している」と伝えることで、相手が諦めることもあります。
これでも返ってこなさそうだという方は、手間がかかりますが、「4章. 敷金の返還で揉めた場合に返還を勝ち取るコツ」で紹介する方法を使い、強硬手段に出ましょう。
また、次の家では敷金で損することのないよう、これ以降もしっかり確認しましょう。
細かいことですが、返還の振込手数料は法律上、貸主の負担になりますので取り決めがないままに控除された場合は、抗議してもいいです。
3-2. 退去予定の方
退去前の方は管理会社に渡す前に部屋を綺麗にするところから始めましょう。
下記の項目は、基本的に借主の負担になりますので、敷金が引かれないように、なるべく自分で綺麗にした上で管理会社に引き渡しましょう。
- 風呂場などの水垢
- 子供の落書き
- 不用品の残置
また、それ以外も立会い時にも注意点があります。
立会い時は一緒に損傷部分を確認する
立会い時は、不動産会社の人と一緒に必ず損傷部分をチェックしておきましょう。入居時のチェックリストもあれば用意し、あなたがつけた傷などでなければそこを強調しましょう。
また、何か損傷を指摘された場合も、上記の通常利用の範囲内の損傷であれば、「経年劣化のはず」と主張しましょう。
管理会社以外の人が来た場合は要注意
管理会社以外の、損傷を直すリフォーム専門の業者が管理会社と一緒に来た際は要注意です。そういった業者は高い金額を請求すればするほど修繕費で儲かるので、悪質な業者だと相場以上の金額を請求してきます。
一緒に確認し、相場以上の料金でないか気をつけるようにしましょう。
立会い時はサインを控える
また、立会い時、敷金・解約精算書にサインを求められる可能性がありますが、修繕費に納得できなければサインをせず、持ち帰って内容を確認しましょう。
「相場などを調べてからサインしたいので何日か待ってください」と伝えれば大丈夫です。
また、退去後にも注意点はあるので、「3-1. すでに退去済みの方」のポイントも意識しましょう。
3-3. 今住んでいる賃貸物件の敷金をより多く返してほしい方
今の家に住んでいる方が退去の日までに気をつけるべきなのは下記の3点です。
- 落書き・キズなど故意・過失によるダメージに気をつける
- こまめに掃除をし、手入れ不足で敷金が減らされるのを防ぐ
- 何かあったらすぐに管理会社や大家に相談する
落書き・キズなど故意・過失によるダメージに気をつける
お子さんの落書きなど、故意・過失のダメージを防ぐのは基本です。
こまめに掃除をし、手入れ不足で敷金が減らされるのを防ぐ
特に、下記の面は、普通に使って汚れても、借主の手入れ不足になります。
- カーペットに何かをこぼして、きちんと拭かなかった事によるカビやシミ
- 冷蔵庫下のサビを放置して拭いても落ちなくなった
- 台所の油汚れ
- 結露の放置によるカビやシミ
- 貸主の所有するクーラーの水漏れを放置した事による壁の腐食
- ガスコンロ置き場・換気扇等の油汚れ・すす
- 風呂・トイレ・洗面台の水垢やカビ
何かあったらすぐに管理会社や大家に相談する
上記以外にも、住んでいて何か問題を見つけた場合はすぐに貸主に報告するようにしましょう。
契約書には「何かあればすぐに管理会社に連絡する義務」などが書かれていることがあり、その場合に報告しないと過失でなくても原状回復の費用を請求されることがあります。
3-4. これから契約するという方
これから賃貸物件を契約するという方は、下記の2点に気をつけましょう。
- 原状回復についての契約を確認
- 入居前に室内をチェック
原状回復についての契約を確認
まず、原状回復について、契約時に契約書を確認しておきましょう。あなたにとって不利な特約はないか、ある場合はどうにかならないかを確認しておきましょう。
東京都の方は条例で決められた、「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」にあなたが負担すべきものが記載されています。
何かしらの記載があることが多く、納得できなければ削除をお願いしましょう。
敷金についての考え方で納得できなければ最悪、契約を見送ることをおすすめします。
少なくとも、「どんなことをすると敷金が減るのか」だけはしっかり理解しておきましょう。
入居前に室内をチェック
また、入居時、下記のようなチェックリストがもらえますので、しっかりと確かめ、何か不備があれば、入居後すぐに管理会社や大家に伝えておきましょう。
引用:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
入居してからしばらく経った後だと、「あなたが壊したのでは」などと疑われ、敷金の返還額が減ってしまう恐れがあります。
下記の点は必ず確認するとともに、気になる箇所は写真を撮影し、合わせて送っておくと確実です。
箇所 | 主にチェックすべき箇所 |
部屋 |
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キッチン |
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玄関 |
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トイレ |
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浴室 |
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その他 |
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4. 敷金の返還で揉めた場合に返還を勝ち取るコツ
ここまでしても、敷金に納得できない場合、明らかに借主の搾取を感じた場合は、法的手段で請求することになります。
手間もかかるので、敷金から差し引かれた金額によっては諦めて方が得策な場合もありますが、方法を紹介しますので最後の手段として実践してみましょう。
契約書にも書かれておらず、ここまで紹介した国の考えにも反しているものは、キチンと手順を踏んで請求すれば勝ち取れる可能性は高いです。
不安であれば国民生活センターに相談を
国民生活センターが間に入ってくれるわけではありませんが、あなたの主張が正しいのか、あなたのケースでは次どんなステップを踏むべきかのアドバイスをもらえます。
いきなり内容証明を送るのは少し不安という方、自分の言っていることは間違っているかもしれないと思う方は、「国民生活センター」に相談するところから始めましょう。
4-1. まずは内容証明を送ろう
大家や不動産会社に本気度を見せること、言った言わないのトラブルを防ぐためにまずは内容証明郵便を貸主に送りましょう。
内容証明郵便とは、どんな内容の郵便をいつ相手に送ったかを郵便局が記録してくれる特別な郵便です。
料金目安(郵便局の窓口で送る場合)
- 520文字の内容証明の場合、942円前後
- 1040文字の内容証明の場合、1202円前後
行政書士にお願いすれば3万円程度でプロが作成・送付をしてくれますので、高額な敷金を請求する場合は検討してもいいでしょう。
4-2. 内容証明はどうやって書くのか
「e内容証明」というパソコンで製作した文章をネットで内容証明として送れるサービスがあり、手間も制約も少ないのでオススメです。雛形もダウンロード可能です。
Microsoft Wordのソフトが入っていなければ使えないので、使えない方はご自身でパソコン・手書きで作成します。この場合、同じ内容のものが3枚必要です。
手書きの場合は、「Amazon」などで専用の複写用紙を購入して作成しましょう。(訂正の手間も面倒なのでパソコンも持っていなければ漫画喫茶などで作成するのがオススメです。)
どうして3枚必要なの?
下記の3つの用途があるからです。
- 相手に送るもの
- 郵便局で保管するもの
- あなたの控えになるもの
4-3. 内容証明のルール
下記の4つを守りましょう。
- 文字数を守る
- 訂正する際は欄外に訂正文字数を書き、捺印
- 複数ページをまとめる方法
- 写真などは入れない
※「e内容証明」で送る場合は、ここに気をつける必要はありません。
文字数を守る
まずは文字数に気をつけなければいけません。
下記のように、行ごとの文字数・ページごとの行数が決まっているので、これに従う必要があります。
横書きで1行20文字以内、1枚26行以内で問題ないでしょう。
縦書きの場合 |
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横書きの場合 |
|
文字数のカウントについて
「郵便局のホームページ」に細かいルールが出ていますが、今回の内容証明で使いそうな文字に関する数え方を下記にまとめました。
- 記号は原則1つ1文字計算
- カッコは()で1字、上(横書きの場合は左)のカッコの属する行の字数にカウント
- ② のように、◯で数字を囲う場合は◯だけで1文字計算。②で2文字、⑩は3文字計算
- ただし、文章の序列を表す際に使う場合(①日時 で使う場合など)は◯の1文字はカウントしない
訂正する際は欄外に訂正文字数を書き、捺印
訂正したり、文字を挿入・削除する場合は、下記のように訂正・削除・加筆(加入と書く)をした上で、左側(縦書きの場合は上側)に、訂正した文字数を書き、捺印します。
パソコンで作成する方は、間違いを見つけたら印刷し直しましょう。
複数ページをまとめる方法
枚数制限はありませんが、複数になる場合はホッチキスでとじ、ページのつなぎ目に印鑑を押す必要があります。
複数ページになった場合はホッチキスで閉じ、ページのつなぎ目に印鑑を押します。
不安であれば、ホッチキス・印鑑を郵便局に持参し、確認しながらまとめましょう。
写真などは入れない
送るのはここまでのルールに沿った内容のものだけで、写真や契約書のコピーは内容証明では送れません。
もし、送りたい場合は「必要でしたら入居時の部屋の写真をお送りします」などと文章に書き、別途送付するようにしましょう。
4-4. 内容証明で書くべきこと
下記のポイントを意識して書くといいでしょう。
①相手と自分の住所を書く
あなたと送付する相手の住所を正確に書きましょう。
②本文は事実とあなたの請求を明確に書く
下記の通りに書き進めましょう。
本文で書くこと
- 契約締結日、振込日
- 退去した日付
- 相手に返還義務がある旨とその金額
- 相手から送られてきた精算書等の内容
- それに対するあなたの反論
- ガイドラインなどに反している箇所を全て
- 返金するよう依頼する旨
③振込期日・振込先を明記する
次のアクションを相手に起こさせるよう、必ず振込期日、振込先を明記しましょう。
振り込まなかった場合は訴訟を検討している旨も書いておけばより強力です。
<具体的なテンプレート>
上記を踏まえ、テンプレートを作成しました。「e内容証明」で送るわけでない方は、文字数に気をつけて、作成しましょう。
令和◯年◯月◯日
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目◯番地
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇〇〇殿敷金返還請求書
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目◯番地
〇〇◯◯私は、貴殿と平成◯年◯月◯日、〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目◯番地〇〇マンション〇〇号室を目的とする賃貸借契約書を締結し、この際私は貴殿に対し敷金80,000円を預託しておりました。
上記の、賃貸借契約は令和◯年◯月◯日を持って退去することで合意解約をし、令和◯年◯月◯日に貴殿に対し、本件建物の明け渡しを終えております。
そのため、貴殿は私に対して80,000円の敷金返還義務が発生しています。
しかし、貴殿は「ハウスクリーニング代」という名目で30,000円を敷金から差し引くとして、残金50,000円を返還をする旨の明細書を送付してきました。
しかし、私は退去の際に通常のハウスクリーニングは済ませており、原状回復義務は果たしています。
別途業者を入れるのは貴殿の都合で、契約書にも書かれていなかったため、私が負担すべきものではございません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも賃借人の負担にならないと明記されています。
そのため、私は、次の入居者確保のための費用と考えられる「ハウスクリーニング代」を敷金から控除することを拒否いたします。
つきましては、本書面到着から10日以内に、預託済み敷金80,000円を下記の口座に返還いただきますようお願いいたします。〇〇銀行 〇〇支店
普通 〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇 〇〇なお、期日までに返還の確認が取れない場合、敷金返還請求の訴訟提起およびその他の法的手続きなどしかるべく対応を取らせていただきますのでご理解頂けますようお願いいたします。
上記のように作成した上で、インターネット上で出すわけではないのであれば、下記のものを持参し郵便局に行きましょう。
- 同じ内容の手紙3通
- 封筒1通(相手の住所・氏名を表側に、あなたの住所・氏名を裏側に書いておく)
- 印鑑
- 送付料金
4-5. それでもダメなら少額訴訟を起こす
上記を送付しても解決しない場合は、「少額訴訟」を起こすことになります。
少額保証は60万円以下の金銭の請求でしか利用できませんが、1回の審理で終わるので、手間も少なく、敷金の請求にはぴったりです。
ただし、相手との話がもつれてしまうと、通常の民事訴訟に移り、時間もお金もかかります。請求できる金額とのバランスを考えて利用しましょう。
Q. 訴訟を起こすのにお金は必要?
まずは、請求する金額に合わせて手数料が必要です。
10万円までの場合1000円、10~20万円の場合2000円といった形で60万円まで、10万円につき1000円ずつかかります。
その他、下記の費用も必要です。
- 郵便切手代(3~5000円前後)
- 裁判所までの交通費
- (相手が企業の場合)登記事項証明書を取得する費用(600円程度)
- 依頼した場合弁護士費用
弁護士に依頼しなくても訴訟は起こせますが、専門的な相談がしたい場合などは高額になる可能性もあります。
これを踏まえ、請求する金額などと合わせて訴訟を起こすかどうか検討しましょう。
4-6. 少額訴訟の起こし方
下記のような流れで進めます。
- 訴状・証拠書類を提出する
- 相手方の答弁書・証拠書類を受け取る
- 追加の証拠書類をつけたり、証人を準備する
- 審理、判決
まずは、訴状を提出するところです。実は、敷金用の訴状のテンプレートと記入例は「裁判所のホームページ」からダウンロード可能ですので、埋めるところから始めましょう。
引用:敷金返還請求の記載例
提出先は、相手(貸主)の住所がある地区の裁判を受け持つ簡易裁判所です。地域ごとに「こちら」から検索が可能です。
また、その他、下記の証拠書類を合わせて提出しましょう。
- 賃貸借契約書・重要事項説明書
- 敷金清算書
- 内容証明郵便・配達証明記録
その他、入退去時のチェックリストや写真など証拠になるものがあれば提出しましょう。
その後は、裁判所の指示に従いながら、別途追加書類を提出したり、相手の答弁を確認しつつ、審理の日になります。
判決がその日に出ることが多いですが、貸主側から異議申し立てが起こり、難航することもあります。
ここまでを踏まえて、少額訴訟をするかどうか判断しましょう。
5. まとめ
敷金は返還されるのかから具体的な請求方法まで敷金に関して解説してきましたが、いかがでしたか?
退去時に引かれるべきなのは「あくまでも借りる人の故意・過失によるものだけ」です。それ以外の経年劣化の修繕費やクリーニング代は、契約書に特約が入っていない限り支払う必要はありません。
しっかりと清算書などをチェックし、返還されるべきものはしっかりと請求しましょう。
揉めた場合は、内容証明・少額保証などの手段もあります。手間とかかりそうな費用、そして返ってくる敷金を考えながら対応していきましょう。
このページがあなたの敷金の返還のお役に立てることを心から祈っています。