賃貸の手付金には要注意!気をつける理由と返金させるための全知識
賃貸を検討しているとき、「申し込みするには手付金を払ってください」「手付金がないと審査できません」などと、不動産会社の人に言われたことはありませんか?
あまり知られていませんが、賃貸の契約では、手付金という概念はありません。しかし、過去には手付金と称したトラブルが多発し、東京では手付金禁止となったほど危険なお金です。
このページでは、大手不動産会社に5年勤務し、現在も賃貸部門で働く筆者が、以下の4つのことをご紹介します。
すべて読めば、手付金がどんな役割のお金なのか知ることができ、トラブルなく賃貸を契約することができるでしょう。
1.手付金とはどんな役割なのか
「手付金」は、不動産の売買契約のとき使われる用語で、家を買いたい人(買主)が売ってくれる人(売主)に支払うお金です。
売買契約の時は、買い手が売主に手付金を支払います。
買い手が「他に良い物件があった!」という理由でキャンセルするときは「手付金を手放す必要がある」と、民法第557条で決められていて、キャンセルしたら手付金は返ってきません。
この法律を利用して、悪徳な不動産会社は、賃貸の契約で”手付金”を払わせ、キャンセルしたら返金しないという流れで、荒稼ぎしていたのです。
そんな返金されない恐れがある、手付金を詳しく解説していきます。
1-1.賃貸の契約では手付金=申込金・預かり金
冒頭でも伝えたとおり、手付金は売買の用語なので、賃貸だと手付金という言葉は使わず、「申込金」や「預かり金」と言い表すことが多いです。
※賃貸で「手付金」という表現は、営業マンの知識不足だったり、悪徳不動産の可能性が高いです。
申込金と預かり金は、どちらも一緒の意味合いで、賃貸物件を借りる意思表示のために支払うお金として扱われます。
審査が有利になるわけではない
賃貸を借りるときは、審査が必要ですが、申込金を払ったからといって、審査が有利になるわけではありません。
あくまでも、借りる意思表示と部屋を確保するための目的として支払うお金なので、注意しましょう。
1-2.契約前のキャンセルは返金される
契約前にキャンセルしたのであれば、不動産会社は申込金や預かり金の返金を拒否してはいけないと、法律で決められています。
つまり、どんな理由であろうと、預かっているだけのお金なので、契約しなかったら必ず返しましょうと、国も決めているのです。
1-3.契約書に署名捺印したら返金されない
契約書に署名捺印した時点で、契約は完了したことになり、そこからキャンセルしても、返金されることはないので、注意しましょう。
万が一、契約完了後にやむを得ない事情でキャンセルすることになったら、ダメ元で不動産会社に相談してみましょう。
良心的なオーナーや不動産会社であれば、相談に乗ってくれるかもしれません。
2.手付金・申込金・預かり金を求められたとき確認すること
東京以外の地方では、いまだに申込金や預かり金を求められることがよくあります。
申込金や預かり金であれば、必ず返金されるお金ですが、支払う前に必ず確認することがあるので、詳しく解説していきます。
2-1.まずは名目を確認する
希望の物件が見つかって申し込みするとき、不動産会社から、「手付金・申込金・預かり金」どの名目で求められているのかを、確認しましょう。
手付金として求められているときは、知識のない営業マンの可能性もあるので、まずは不動産会社に連絡して確認してみましょう。
そして、不動産会社も同じことを言っていたら、悪徳な不動産会社の可能性が高いので、「suumo」や「HOME’S」で同じ物件を取り扱っている、別の不動産会社を探して問い合わせてみましょう。
キャンセルしたときはどうなるのかも確認する
不動産会社の中には、申し込み書に「借主からのキャンセルは、預かり金を違約金扱いにする」といった内容にしていることもあります。
この場合だと、違約金として、返金されなくなってしまうので、申し込み内容をきちんと確認しましょう。
2-2.賃料1.1ヶ月分以上のときは内訳を確認する
申込金や預かり金は、1万円〜家賃1.1ヶ月分が相場なので、それ以上求められているときは、内訳を確認してください。
不動産会社によっては、1.55ヶ月分請求してきたうちの、0.55ヶ月分を事務手数料の返金しないお金として、請求している可能性もあるので、注意しましょう。
2-3.いつまでに支払うのか確認する
不動産会社の規定により異なりますが、一般的には以下のスケジュールが多くなります。
- 申込金:申し込みしてから2~3日以内
- 預かり金:審査承認となってから2~3日以内
申込金
入居申し込み書を提出したあと、2~3日以内に支払います。
人気物件だと、入居希望者が非常に多いので、申込金の入金を確認できた人から、審査を進めている不動産会社もあります。
預かり金
審査承認となってから、2~3日以内に支払います。
新築マンションや退去予定の物件など、契約や入居できるのがまだ先のときは、部屋を確保する予約のようなイメージで預けることになります。
2-4.支払い方法の確認する
こちらも不動産会社の規定によって異なりますが、必ず銀行振込を希望しましょう。
なぜなら、振り込んだ金額・日時・振込口座が、すべて証拠として残せるからです。
現金での支払いは避ける
不動産会社で申し込み書を記入したとき、その場で申込金を求められて、言われるがまま現金で支払うのはやめましょう。
万が一、「申込金なんて受け取っていません。」と言ってくる悪徳な不動産会社だったら、厄介なトラブルになってしまうので、必ず振込で支払いましょう。
2-5.預かり証を必ず発行してもらう
振込か現金支払い、どちらの場合でも、申込金や預かり金を支払ったら「預かり証」を必ず発行してもらいましょう。
そのときに、必ず記載してもらう内容は以下の通りです。
- 受領した日付
- 返還を希望すれば返還される旨
- 預かり金の目的
- 不動産会社・担当者の詳細と印鑑
預かり証の例 |
3.申込金・預かり金はこんなときでも返金される
上の章でも伝えてきましたが、申込金と預かり金は契約しない限り必ず返金されるお金です。
下記で説明する内容のときは、不動産会社からの返金を待つのではなく、自ら返金を求めるようにしましょう。
3-1.自己都合によるキャンセルをしたとき
契約前であれば、どんな場合でもキャンセルすれば必ず返金されます。
賃貸を借りるときは、契約(印鑑を押す)までに一切費用はかかりません。
もし何かしらの理由をつけられ、費用を請求されたり、預けたお金が帰ってこないようであれば、違法となる可能性が高いので、4章「トラブルが発生したときの対処法」を確認しましょう。
3-2.入居審査に落ちたとき
審査に落ちてしまったときは、契約することができないので、このときも必ず返金されます。
また、審査に落ちたあと、不動産会社の人が別の物件を進めてきて、内覧や申し込みをすることになっても、必ず一度返金してもらうようにしましょう。
なんらかのトラブルに発展する恐れもあるので、自ら返金してくださいと、申し出ることが大切です。
3-3.重要事項の説明後でも返金される
賃貸を契約するときは、重要事項(賃料など契約に関わる重要な点)の説明を受けることが、義務付けられています。
重要事項を説明されたあとに、契約に進みますが、この時点で契約内容が思ってたものと違う内容だったり、納得できない部分があった場合、この時点であればまだキャンセルしても返金されます。
とにかく契約書にサインするまでが重要
何度も伝えてきましたが、契約書にサインするまでは契約が完了していない状態なので、必ず返金されます。
しかし、中には不動産会社に言われるがまま、返金を諦めてしまう人もいるので、次に説明する対処法を事前に把握しておきましょう。
4.トラブルが発生したときの対処法
不動産会社は、さまざまな理由をつけて返金を拒みますが、下記どちらかの窓口に相談することによって、すべて解決されます。
- 全国宅地建物取引業協会連合会
- 全日本不動産協会
全国の不動産会社が、上記のどちらかに加盟していることが多く、返金に応じなかったり、悪質な請求をしてくる不動産会社は、除名処分されることもあるので、非常に効果的です。
4-1.全国宅地建物取引業協会連合会
引用:全宅連
「全国宅地建物取引業協会連合会」は、不動産業者の約80%が加入する国内最大の業界団体です。
全国に協会が設置されているので、最寄りの窓口に出向いて相談することもできますし、電話での相談も無料で受け付けています。(各都道府県の窓口一覧)
まずは、代表窓口(03-5821-8113)に電話して、トラブル先の不動産会社名を伝え、加入しているか確認してみましょう。
もし加入していないときは、続けて下の協会に問い合わせてみましょう。
4-2全日本不動産協会
引用:全日本不動産協会
「全日本不動産協会」は、建設大臣より設立許可を受けた、全国に本部を持つ不動産業者の全国組織です。
こちらの協会では、加入している会員情報を住所から検索できるので、トラブル先の不動産会社が加入しているか調べてみましょう。(会員検索ページ)
そして、加入していることが判明したら、会社名とトラブル内容を伝えれば、解決策を提案してくれます。
ただし、同じ案件での相談は原則1回だけなので、要件をまとめてから問い合わせをするようにしましょう。
5.まとめ
賃貸の手付金について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
基本的に、賃貸で手付金という概念はありませんので、求められたら必ず疑うようにしましょう。
そして、申込金や預かり金であれば、内容をきちんと確認してから支払うようにしましょう。
トラブルに発展したら、すぐに各協会に連絡して解決してもらいましょう。
あなたが手付金で悩むことなく、無事に契約できることを陰ながら願っています。