賃貸更新料の仕組みと不動産のプロが教える最安で更新するための全知識
「更新料の相場っていくら?」「払う必要はあるの?」など、更新料に関してお悩みではありませんか?
更新料は、契約更新時に払うお金で、明確なルールがありませんが、損しないために、なぜ必要なのか、相場はいくらなのか理解しておく必要があります。
このページでは、大手不動産会社に5年勤務し、現在も賃貸の部署で働く筆者が、以下の4つのことをご紹介します。
すべて読めば、更新料の仕組みや交渉の方法もわかり、さらにいい条件で今の自宅を更新することができるでしょう。
1.賃貸の更新料とは?徴収する理由と2つの交渉方法
賃貸の更新料は、いま住んでいる部屋の契約を「更新するか・しないか」検討して、更新するときに支払うお金です。
契約満了日の1ヶ月か2ヶ月前には決断する必要があり、更新するときは、請求された更新料を支払うことになります。
更新しないときも、期日までに連絡しないと自動更新となり、支払い義務が発生する可能性があるので、注意しましょう。
1-1.更新料を徴収する2つの理由
更新料は、更新すると決めたときに支払うお金ですが、法律で定められたルールではありません。
基本的には大家さんの考え方次第で、必要か不要か決まります。
そして、大家さんが必要だと判断する理由には、以下の2つが関係しています。
更新料を徴収する主な理由 出典:財団法人ベターリビング
- 一時金収入として見込んでいる(53.0%)
- 長年の習慣(50.4%)
1-2.更新料はだれのもの?返金はされる?
基本的には大家さんの所得となることが多いですが、物件によっては物件を管理する不動産会社と折半することもあります。
そして、敷金とは異なり、退去したときに支払った更新料は入居者に返金されることはありません。
消費税はかからず、地域によって異なりますが家賃の0.2~1ヶ月分が相場です。
更新事務手数料とは
「更新事務手数料」または「更新手数料」という名目で、更新料とは別に家賃の10~25%を請求されることがあります。
こちらは不動産会社が受け取る利益なので、消費税がかかる費用です。
1-3.更新料はいつ払うの?
更新料の支払いは、一般的に契約が切れる月に、翌月の賃料と一緒に支払うケースが多いです。
仮に、12月31日が契約満了日のときは、1月分の賃料とあわせて12月27日に支払うイメージです。
2.3カ月前に更新の案内が届きます
更新料の払い忘れがないように、不動産会社から更新の案内が自宅に届きます。
毎月の賃料が引き落としの場合は問題ないですが、振り込みにしている人は払い忘れのないように注意しましょう。
1-4.払わないと退去になるの?
更新料を払わないからといって、すぐに退去となることはかなり稀です。
なぜなら、大家さんが契約を解除するには「正当な理由」が必要と法律で決められているからです。
そして、仮に更新料を払わないときでも「法定更新」という扱いになり、契約は自動的に更新されます。
退去を求められるケース
契約書に「更新料の支払いがされないときは、契約を解除とする」のような内容が記載されているときは、正当な理由があるとして退去を求められます。
1-5.支払いを遅らせたり、分割払いにすることはできる?
分割払いは厳しいと言えますが、支払いを遅らせることは相談することによって、対応してもらえるかもしれません。
更新料は大家さんの考え方次第という項目なので、大家さんもしくは不動産会社に事情を説明して相談してみましょう。
1-6.更新料を安くすることはできる?
基本的に、更新料の金額は契約書に「新賃料の◯ヶ月分」と明記されていることが多いため、更新料の金額自体を安くすることは難しいです。
それよりも、「更新後の新たな家賃を安くしてほしい!」と交渉することが下記の理由からおすすめです。
- 安くするための交渉材料を用意しやすい
- 更新後の賃料も下がるので長い目で見ると得できる
むしろ、更新のときは、大家さんが家賃を見直す唯一の機会なので、契約中で1番交渉しやすいタイミングと言えます。
1-7.家賃交渉を成功させる2つの材料
新賃料を安くするためにはしっかり材料を用意してから交渉しましょう。
大家さんに「この人なら安くしてあげよう」「これなら安くするしかないな」と思わせることが重要なので、以下の2つを検討材料の参考にしてみましょう。
- 入居中に滞納やトラブルがない
- 近隣の相場と比較する
入居中に滞納やトラブルがない
契約から更新までの期間に、滞納や近隣とのトラブルがない入居者であれば、大家さんとしては「このままずっと入居してほしい」と思われる可能性が高いので、以下のようにメールを送ってみましょう。
○○不動産 担当○○様
お世話になっております。
○○マンション○○号室に入居している○○です。
この度、更新の案内を送付頂き、ありがとうございました。
今回、連絡した理由としては、更新後の家賃に関してです。
私は、契約時から現在まで、家賃の滞納や迷惑となる行為は一切していないことから、
更新後の家賃を○○円減額して頂きたく存じます。
○○円減額して頂けるなら、この物件で更新を考えておりますが、一切の減額が難しいようであれば、他の物件への引越しを検討している状況ですので、一度検討いただき、1週間後までに回答をお願いします。
身勝手な申し出となり大変恐縮ですが、ご検討よろしくお願い致します。
近隣の相場と比較する
契約したときから2年経てば、自然と家賃相場も落ちてくることが予想されますので、同じマンションや近隣マンションの値段を確認して、以下のように交渉してみましょう。
交渉時は回答の期限を設ける
交渉時は、回答期日を設けないとダラダラと回答を遅らされて、最悪の場合、そのまま自動更新となる可能性もありますので、注意が必要です。
2.更新料の相場と地域によって異なる理由
更新料の相場は、全国平均で見ると0.89カ月となっていますが、更新料ありの物件が多い関東だと「一律して1カ月」と考えることが望ましいです。
以下の表は、全国の更新料をデータ化してランキングにしたものです。
引用:東急住宅リース
更新料0の物件を除くと、東京は平均で1.02ヶ月分の更新料が必要ですが、北海道は0.22ヶ月分と地域によってバラバラということがわかります。
2-1.更新料が地域によって異なる理由
更新料が地域によって異なる理由は、引っ越してくる人が多いか・少ないかということが影響しています。
引っ越してくる人が多い東京近郊だと、更新料ありの物件でも特に影響なく入居者を確保できるので、7割前後の割合で更新料1ヶ月分を求められます。
逆に、九州や北海道などは、賃貸物件への引っ越し需要が少ないので、更新料ありの物件だと、入居者を確保できないため、更新料は抑えられます。
引用:東急住宅リース
京都は習慣的な理由で更新料が高い
上の図では、京都だけは関東と同じ水準になっていますが、実際には関東より更新料の金額が高い物件も多くあります。
引っ越してくる人の数は少ない京都ですが、長年の習慣で更新料が高いままになっています。
2-2.都心の人気エリアはさらに高額な設定も
数はまだ少ないですが、都心の賃貸需要が高いエリアに建つ人気マンションでは、更新料を2~3カ月に設定している物件もあります。
今後は繁忙期などの時期によって、礼金2カ月・更新料2カ月の物件が増えてくると予想されます。
2-3.大手不動産会社の賃貸物件は地域関係ない?
東京に本社がある、大手不動産会社が建設したマンションだと、東京の水準で更新料を決められることが多いです。
地方の中心地の駅前に建つマンションは、これに該当することが多く、他の物件と比べてコストが高くなるので、契約前に更新料も忘れずに確認するようにしましょう。
3.更新料なしの物件は3つの理由がある
ただし、東京でも更新料0の物件は3割ほど存在します。
更新料を求められる確率が高い地域で、更新料0にしている物件は3つの理由が考えられます。
- 家賃が高く設定されている
- 何かしらの事情で不人気な物件
- 定期借家契約の可能性
この3つの内容を詳しく解説していきます。
3-1.家賃が高く設定されている
更新料を徴収する理由のひとつに、毎月の家賃を安くしている代わりに、更新料でその分を補うと考えている大家さんもいます。
更新料が0だと毎月の家賃を最初から高く設定している可能性がありますので、注意しましょう。
都心のオフィス街には注意
オフィス街に建つマンションは、転勤が多いサラリーマンをターゲットに更新料0にして、家賃を上げる傾向があります。
長く住むと損するので、近隣の相場を確かめてから契約しましょう。
3-2.何かしらの事情で不人気な物件
事故物件など、通常の募集では入居者を確保できない物件は、更新料を0にしていることがあります。
同じマンションの別区画では、更新料1カ月となっていることもありますので、該当の部屋が事故物件でないか、不動産会社の担当者に確認するようにしましょう。
3-3.定期借家契約の可能性
賃貸契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があり、「定期借家契約」では更新料はかかりません。
「定期借家契約」は期間を○年と限定して契約するので、そもそも更新という概念がありません。
期間が満了になると、契約は自動的に解除されるため、住み続けることはできない契約となります。
再契約をすることもできる
「定期借家契約」でも物件によっては、更新ではなく再契約という形で新たに契約を結ぶことができます。
そのときは「更新料」ではなく「再契約料」として、賃料の0.5~1カ月が相場となり、敷金・礼金も更新と同じく引き継がれます。
多くの場合、募集図面に「定期借家契約○年」と記載されていますので、内覧前に確認しましょう。
4.更新料の消費税に関して
更新料に、消費税が必要か必要ではないかは「契約形態」によって以下の通り異なります。
契約形態による更新料の消費税
- 住宅契約:消費税なし
- 事務所・店舗契約:消費税あり
- 駐車場契約:消費税あり
住宅の更新料は消費税が発生しませんが、駐車場は発生します。同時に契約した場合も、契約書が同じか、分かれているかで下記のように変わります。
4-1.住宅+駐車場を別契約しているケース:一部消費税がかかる
住居と駐車場の契約書がバラバラのときは、それぞれで消費税の有無が異なります。
マンションを契約するときはバラバラになっていることが一般的で、駐車場の更新料だけは消費税が必要です。
4-2. 住宅+駐車場を一緒に契約しているケース:消費税がかからない
戸建てのように、敷地内に駐車場が付いているときは契約書に組み込まれていることが一般的ですので、消費税はかかりません。
駐輪場・トランクルームも同じ
こちらも契約書に組み込まれていることが多いですが、分譲マンションでは、駐輪場やトランクルームも契約書が別になっていることが稀にあります。
そのときも上のイメージ図と同じ考え方になりますので、更新時には契約書を確認してみましょう。
5.まとめ
賃貸の更新料について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
更新のタイミングは、家賃交渉のチャンスということを忘れずに、近隣の相場を確認してみましょう。
また、更新しないときは、解約の連絡をしなければ自動更新されてしまうので、忘れずに対応してください。
新たに引越しをするときに、更新料が0の物件だったら3つの可能性があるので、事前に確認してから契約するようにしましょう。
- 家賃を高く設定されている
- 何かしらの事情で不人気な物件
- 定期借家契約の可能性
あなたが更新料で悩むことなく、無事に更新・契約できることは陰ながら祈っています。