一目でわかる!土地売却時に出入りする費用の流れと目安金額早見表
土地売却を検討していて、「売却にかかる費用にはどんなものがあって、一体どれくらいかかるのか」気になっていませんか?
全国の土地価格は過去20年で見ても高い水準にあり、自宅や投資用の土地売却を検討するには今が絶好の時期であることは間違いありません。
しかし、土地売却には様々な費用がかかるため、きちんとそれらを時系列に沿って理解していないと、「思っていたよりも全然利益が上がらなかった…」「利益を使ってしまって後で税金が払えない…」なんてことにもなりかねません。
このページでは、元大手不動産会社に勤務し、延べ2,000件以上の不動産売却に携ってきた筆者が、「土地売却にかかる費用の流れと目安額」について、以下の流れに沿ってご紹介します。
- 土地売却時に出入りする費用を時系列に解説
- 売却価格別に必要な目安費用早見表
- 売却益にかかる3つの税金
- 「所有5年の自宅用土地を3千万円で売却した場合」のケーススタディ
- 土地は費用を抑えつつ少しでも高く売却するべき!
すべて読めば、「土地売却にかかる費用」について、プロと同等の知識を身につけることができるでしょう。
売り時は今!利上げで今後地価は下落する
2024年に日銀が行ったゼロ金利の解除は、住宅ローン金利を引き上げ、これまで好調だった不動産相場の暴落へとつながります。
アメリカでは2022年に大きな利上げがあり、都心のビルが半値で売却されるなど、実際に不動産価格の暴落が起きています。
来年以降は売却益が半減するリスクもあり、かろうじて低金利が続く2024年はまさに土地の売り時と言えます。
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目次
1. 土地売却時に出入りする費用を時系列に解説
土地売却にあたっては、売却額をそのまま手にできるということはありません。
トータルで売却額の10%前後の費用や税金がかかることが一般的であり、それらを含めた計算をして初めて最終的な手取りの額を知ることができるようになります。
売却後の資金計画を立てていく上では、以下のような売却にかかる費用や税金について、発生のタイミングも含めて事前に知っておくことが大切です。
土地売却にかかる費用について、以下の3種類に分けて解説していきます。
- 必ずかかる費用
- 状況次第でかかる費用・税金
- 戻ってくる可能性のある費用・税金
1-1. 必ずかかる2つの費用
- 印紙代(印紙税)
- 仲介手数料
一般的な仲介業者を通しての売却の場合、上記二つの費用については必ず発生してきます。
印紙代(印紙税)
印紙代(印紙税)とは、簡単に言うと、「売買契約書の作成にあたりかかる税金」です。
印紙税の額は、物件の売却価格(契約書に記載される金額)によって以下のようになります。
売却価格 (契約書に記載された契約金額) | 税額 |
---|---|
100万円超、500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下のもの | 3万円 |
1億円超、5億円以下のもの | 6万円 |
5億円超、10億円以下のもの | 16万円 |
売買契約書は売主用、買主用に二枚作成されることが多く、それぞれが自分の分の契約書の印紙代を負担するのが一般的です。
契約書を作成する売買契約の際に支払いが必要となります。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産業者に買い主を見つけて来てもらうところから、契約・引渡しまでのあらゆるサポートをしてもらう対価として支払う手数料です。
成功報酬のため、仮に買い手が見つからずに契約に至らなかった場合は一切かかりませんが、売却が決まった場合は必ず発生してきます。
売買契約時に50%、引き渡し時に50%を、二回に分けて業者に払うことが一般的です。
仲介手数料の対象となる仲介業務には、一般的に以下のような内容が含まれています。
- マーケティング・ターゲティング
- 探客・広告活動
- 現地確認等の段取り手配・立会い
- 条件交渉の代行・仲立ち
- 融資サポート
- 契約書・重要事項説明書の作成
- 登記手続き手配
- 測量・物件調査等の手配
- 残置物処分等のサポート
- 確定申告のためのサポート
色々と書いてありますが、要は“土地売却に必要なことはほぼ全て”です。
そのため、不動産業者と媒介契約を結ぶだけで、売主はほぼ何もしなくてもまるで執事のように全てサポートしてもらえます。
仲介手数料は、不動産業者や交渉によっても変わってきますが、宅建行法により上限額が決められており、ほとんどの業者がその上限で料金設定しています。
宅建行法に基づく、仲介手数料の上限額は以下の通りです。
売買価格(税込み) | 仲介手数料の金額 |
---|---|
200万円以下の金額 | 5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の金額 | 4%+消費税 |
400万円を超える金額 | 3%+消費税 |
土地売却の場合、ほとんどのケースで400万円を超えると思いますが、400万円を超える場合に簡単に仲介手数料上限額を計算するための計算式はこちらです。
簡易計算式:仲介手数料の上限額 =「売買価格」 × 3% + 6万円 + 消費税
何も言わなければ、ほとんどの業者が上記の金額を要求してきますが、交渉次第では安くしてもらえるケースも多いため、必ず事前に交渉してから媒介契約を結ぶようにしましょう。
ただ、やりすぎると割りの良い他の案件を優先される等、サービスの質低下につながる可能性もあるため、注意が必要です。
1-2. 状況次第でかかる9つの費用
- 測量費用
- 境界確定費用
- 物件調査費用
- 追加広告費
- 残置物処分・解体費用
- 抵当権抹消登記費用
- ローン返済手数料
- 譲渡所得税・住民税
- 消費税
物件の状態や売主の事情、高く売るための戦略等、「状況次第でかかる費用」には上記のような9つの費用が挙げられます。
売主の方針次第でかけずに済むものから、条件が当てはまると必ずかかるものまで様々ですので、以下一つ一つ解説してきます。
測量費用
測量費用は、売出し時の物件内容の確定のために必要な費用です。
現況図を作るための「現況測量」と隣地との境界確定までやる「確定測量」があり、少なくとも土地の売却にあたっては「現況図」が必要であることから、もし手元に現況図がない場合や、図面はあるものの古すぎて現況と正確に合致するか不明な場合には改めて現況測量する必要があります。
稀に、古い測量図や全く測量図をつけずに土地が売りに出されているケースもありますが、そのような物件では実際の大きさが不明確であり、リスクが大きすぎて買い手がつかない可能性が大です。
- 現況測量費の目安:100㎡の四角い土地の場合 → 10~20万円(高低差・敷地内容により変わる)
- 目安期間:測量1~2日程度、図面作成1週間程度
境界確定費用
境界確定費用とは、前項の測量に伴い隣地との境界まで確定するための確定測量にかかる費用です。
土地の購入希望は、「境界がすべて確定されている土地」と「一部未確定の土地」とでは、当然に前者を好みますので、確実に高値で売却したい場合には確定測量により境界確定までしておいた方が得策です。
しかしながら、境界を確定するためには、全隣地の所有者全員と現地立会い等で意思確認を行い、登記書類への署名捺印まで必要になることから、ただでさえ相応の時間と手間がかかる上、一人でも非協力的な隣地所有者がいると完了できないという難しい作業が要求されます。
そのため、土地家屋調査士や測量士等に委託する費用と確定完了までにかかる時間(やってみないとわからない)が売主にとっての大きな負担となり得るため、状況によって判断すべきでしょう。
- 確定測量費の目安:100㎡で隣接地が4つの場合 → 30~40万円(広さ・状況によって変わる)
- 目安期間:現況測量1~2日程度、境界確定・図面作成3ヶ月程度(物件によっては〜数年もある)
物件調査費用
物件調査費用とは、工場跡地等で、明らかに土壌汚染等が心配されるような場合に、その状態を調査するための調査費や、明らかに地盤が悪そうな場合等で建物建築の可能性を探る上での地盤調査の費用等のことです。
基本的に、通常の住宅地等ではそこまでの調査は行いませんが、上記のような理由から調査をして結果を公表しないと買い手がつかなさそうな場合等に売却戦略としてあえて行うケースがあります。
こちらも、相応の費用と時間がかかる上、結果次第ではより売りにくくなる可能性もあるため、仲介業者と相談しながら状況次第で判断した方がよいでしょう。
- 土壌調査費用の目安:100㎡の土地の場合 → 30~50万円
- 目安期間:調査から報告書の作成完了まで → 1ヶ月弱
追加広告費
一般的な広告(レインズやポータルサイトへの登録、チラシのポスティング、店頭での紹介)の費用ついては業者負担となります。
しかしながら、有料であることを確認の上、売り主から業者に別途広告を依頼した場合には追加広告費が発生してきます。
宅建業法の中で、売り主からの依頼のない広告費用の請求は禁止されてるため、基本的に売主側から依頼をしない限りは費用が発生することはありません。
目安予算:売り主から特別に依頼しない限りゼロ(基本的に不要)
残置物処分・解体費用
残置物処分・解体費用は、売却土地に何か私物や売買契約によって事前に解体・処分する約束をしたモノや建物・工作物等がある場合に発生する費用です。
ゴミや私物の備品等の小さなものから樹木や老朽建物・工作物等の大きなものまで様々な対象がありますが、売主が費用負担するか買主が費用負担するかは契約条件の交渉の内容によって変わります。(どちらにせよ売却代金増減によって調整されるのが一般的です)
また、場合によっては購入希望者の現地確認の際の印象を上げるために売り出し前に処分するケースもあります。
手持ち資金に余裕がない場合には、契約手付金の金額を多めに交渉するか、仲介手数料の部分金を減らすないしは無しにするように事前に交渉しておきましょう。
- 処分費用の目安:軽トラック一台分 → 3~5万円(残置物の種類、状態によって変わる)
- 解体費用の目安:木造建物(30坪)の解体の場合 → 100~150万円(解体物の構造や広さによって変わる)
抵当権抹消登記費用
抵当権とは、仮に物件の持ち主がローンの返済に行き詰まった場合、銀行が物件を競売に出して残債を回収できる権利のことを言います。
ローンが残っている物件には、銀行による抵当権がついていますが、売却して所有権を買主に移すためには、ローンを完済し、抵当権を外す手続きというのが必要になります。
通常、決済・引渡し時に買い主から支払われる代金にてローンを一括返済し、同時に司法書士が抵当権を消し、所有権を買主に移す手続きをまとめて行うことになります。
所有権を移す手続きにかかる税金と、司法書士への報酬が「抵当権抹消登記費用」ということになります。
目安予算:1.5万円程度(不動産1個につき1,000円+諸経費+司法書士報酬)
ローン返済手数料
前述の通り、物件の所有権を買主に移すには、抵当権を外すためにも、ローンの完済が必須となりますが、一定期間の支払いが残っているローンを一括返済する形となる場合には、それについても費用がかかってきます。
こちらは、金融機関との契約内容によって金額は大きく異なりますが、決済・引渡し時に一括返済するタイミングで数万円程度の手数料がかかります。
目安予算:3万円程度(金融機関・契約内容による)
譲渡所得税・住民税
土地売却で売却益が出た場合には翌年3月の確定申告により譲渡所得税、復興所得税、住民税といった税金を支払わなければなりません。
売却物件の用途や売却目的・売却理由等により様々な特別控除が用意されているため、最終的にかからずに済むケースの方が多いですが、仮にかかる場合には、物件の所有期間に応じて税額が大きくなりますので、事前に理解して残しておく必要があります。
※売却益にかかる税金については、詳しい計算方法も含めて3章で詳しく解説します。
- 所有期間5年超の場合:売却益にかかる税率=20.315%
- 所有期間5年以下の場合:売却益にかかる税率=39.63%
※売却益=売却価格ー物件の取得費ー売却費用(仲介手数料等)
消費税
一般個人にはあまり関係のない話ですが、売り主が消費税の課税事業者に該当している場合には、土地売却の建物部分について消費税がかかりますので注意が必要です。
課税事業者とは、基準期間(前々年度1年間or前年度の上半期)の課税売上が1,000万円以上ある個人及び法人のことを指します。
課税事業者に該当している場合には、建物部分につき消費税を買い主から預かり、翌年の確定申告により納付しなければなりません。
土地(区分所有対象地含) | 建物 | |
一般個人 | 非課税 | 非課税 |
非課税事業者(個人事業主・法人) | 非課税 | 非課税 |
課税事業者(個人事業主・法人) | 非課税 | 課税 |
消費税は、仮に買い主から預かっていない場合でも事業者に納付義務があり、金額も多額になりますので、特に個人事業主等で課税事業者に該当している人は気をつけましょう。
1-3. 戻ってくる可能性のある3つの費用・税金
- 固定資産税・都市計画税の清算金
- ローン保証料
- 所得税
上記3つの費用は、土地売却によって逆に戻ってくる可能性があります。
特に、特に固定資産税・都市計画税の清算金については決済日までの月割り計算で清算して、必ず戻ってくるため、しっかりと押さえておきましょう。
以下、一つ一つ解説していきます。
固定資産税・都市計画税の清算金
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に対して1年分の納付請求がいく仕組みになっています。
そのため、引渡し時において、すでに1年分の税金を売り主が納付済みの場合には、引渡し日〜年末までの期間に応じた分の税金が決済時に清算され、買い主から売り主に支払われることになります。
ローン保証料
売却予定物件をローンで取得し、その際に保証会社に保証料を支払っている場合には、一括返済時点で未経過期間に応じた分の保証料が返ってきます。
具体的な返還金額については、金融機関や当初支払った保証料、未経過期間等によっても異なりますので、確認したい方はローンを借りた金融機関に問い合わせてみましょう。
所得税
前述のとおり、土地売却で利益が出た場合には翌年の確定申告により各種税金を納めなければいけません。
逆に売却益がなく、売却益の計算結果がマイナスとなった場合には、確定申告時に給料等の他の所得からマイナス分を差し引くことで所得税を減らすことができます。
この際、サラリーマン等で毎月所得税を源泉徴収されている人であれば、払い過ぎている分の所得税が返ってくることになります。
※売却益にかかる税金については、詳しい計算方法も含めて3章で詳しく解説します。
2. 売却価格別に必要な目安費用早見表
これまで解説してきた各種費用について、物件の売却価格別に、「必ずかかる目安費用」を早見表にまとめましたので、是非、ご参考にしてください。
売却価格別目安費用早見表 | ||||
売却価格 | 2,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 |
仲介手数料 (3%+6万円+消費税10%) | 72.6万円 | 105.6万円 | 138.6万円 | 171.6万円 |
印紙税 | 1万円 | |||
必ずかかる費用合計 | 73.6万円 | 106.6万円 | 139.6万円 | 172.6万円 |
その他必要に応じた費用 | 測量費用、境界確定費用、物件調査費用、追加広告費、残置物処分・解体費用、税金、等 |
売却価格 | 6,000万円 | 7,000万円 | 8,000万円 | 9,000万円 |
仲介手数料 (3%+6万円+消費税10%) | 204.6万円 | 237.6万円 | 270.6万円 | 303.6万円 |
印紙税 | 3万円 | |||
必ずかかる費用合計 | 207.6万円 | 240.6万円 | 273.6万円 | 306.6万円 |
その他必要に応じた費用 | 測量費用、境界確定費用、物件調査費用、追加広告費、残置物処分・解体費用、税金、等 |
売却価格 | 1億円 | 1.5億円 | 2億円 | 3億円 |
仲介手数料 (3%+6万円+消費税10%) | 336.6万円 | 501.6万円 | 666.6万円 | 996.6万円 |
印紙税 | 3万円 | 6万円 | ||
必ずかかる費用合計 | 339.6万円 | 507.6万円 | 672.6万円 | 1002.6万円 |
その他必要に応じた費用 | 測量費用、境界確定費用、物件調査費用、追加広告費、残置物処分・解体費用、税金、等 |
3. 売却益にかかる3つの税金
- 売却価格が取得費を上回り、利益が出た場合は税金がかかる
- 税率は物件の所有期間によって大きく変わる
- 条件が合えば「特別控除」で節税ができる
土地の売却額が取得費を上回って利益が出た場合、それは譲渡所得と呼ばれ、「譲渡所得税、復興所得税、住民税」という3つの税金がかかってきます。
譲渡費用(仲介手数料、確定測量費、空き家の解体費等の売却費用)については課税対象となる利益から差し引くことが可能になります。
譲渡所得は、具体的に下記の計算式で求められます。
- 譲渡所得=「売却価格」−「取得費」−「譲渡費用(仲介手数料等)」
物件の相場を調べたり、業者に査定額を出してもらうことで、売却価格の見込みが立ったら、実際に譲渡所得が出るか計算してみましょう。
譲渡費用については、仲介手数料も含めて、売却価格の10%程度に収まることがほとんどのため、売却価格×0.1の結果を当てはめることで概算が可能です。
計算の結果、譲渡所得がプラスになった場合、その額に対して税金が発生してきます。
譲渡所得がマイナスになった場合は?
計算の結果がマイナスとなった場合は「譲渡損失」となり、課税はされません。
5年超保有していた自宅の売却の場合、マイナス分を給料等の他の所得から差し引き、所得税を減らすことが可能となります。
サラリーマン等で毎月所得税を源泉徴収されている人であれば、損失があったことについて確定申告をすることで、払い過ぎている分の所得税が返ってくることになります。
売却益がマイナスとなった場合でも、必ず翌年の確定申告を忘れずに行うようにしましょう。
税率は物件の所有期間によって大きく変わる
譲渡所得は、売却物件の所有期間に応じて以下のように分けられ、大きく税率が変わります。
- 売却した年の1月1日において所有期間が5年超 =「長期譲渡所得」
- 売却した年の1月1日において所有期間が5年以下 =「短期譲渡所得」
あくまで売却した年の1月1日時点での所有期間であり、売却時点のものとは異なる点に注意しましょう。
※相続した土地については、亡くなった元の所有者の所有期間を引き継ぐことができます。
ex)亡くなった親が10年所有した土地を、相続人の子が所有1年で売却した場合 → 所有は合計11年とみなされ、長期譲渡所得の税率が適用
「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」にかかる税金と税率はそれぞれ以下の通りです。これらについては、自宅用、事業用を問わず適用されます。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
譲渡所得税率 | 15% | 30% |
復興所得税率 | 所得税×2.1% | |
住民税率 | 5% | 9% |
合計 | 20.315% | 39.63% |
以下は、仮に300万円の売却益が出た場合の税額を長期譲渡所得と短期譲渡所得で比べたものです。倍近い差が出ていることがわかります。
譲渡所得300万円の場合の税額 | ||
長期譲渡所得(所有5年超で売却) | 609,450円 | |
短期譲渡所得(所有5年以下で売却) | 1,188,900円 |
このことから、譲渡所得が発生する見込みがあり、なおかつ所有が5年未満での売却を検討されている方は、税額も含めて、売却のタイミングを検討するべきです。
条件が合えば「特別控除」で節税ができる
自宅用土地や相続空き家の敷地の売却の場合、譲渡所得が発生しても、一定の条件を満たせば大きな金額を控除できる制度が用意されています。
控除額が大きいため、特例が適用されると大きな節税が期待できます。
自宅用土地の売却で使える3,000万円特別控除
自宅用土地の売却における譲渡所得については、所有期間の制限なく、3,000万円までなら課税を免除される特例があります。
特例を使うには、以下の条件を満たす必要があります。
<家屋が残っている場合>
- 現に住んでいる場合、家屋と共に敷地を売却する
- 転居済みの場合、転居日から数えて3年後の日が属する年の12月31日までに家屋と共に敷地を売却する
- 転居済みの場合、転居日以降駐車場等の事業用の貸付けに使っていない
<家屋取り壊し後の場合>
- 家屋を取り壊してから一年以内かつ、住まなくなってから数えて3年後の日が属する年の12月31日までに売却する
- 家屋の取り壊し後、売却までに駐車場等の事業用の貸付けに使っていない
3,000万円を超える譲渡所得が発生することはあまりないため、自宅用土地の売却の場合、この特例を使うと課税額がゼロになるケースが多いです。
保有10年超の自宅用土地の売却なら、税率を下げる特例も併用できる!
仮に3,000万円を超える譲渡所得が発生した場合、超えた部分について税金がかかってきますが、10年超保有してからの自宅用土地の売却の場合、併せて税率を下げる特例を使うことが可能となります。
以下の通り、譲渡所得の6,000万円以下の部分については、長期譲渡所得の20.315%よりさらに低い税率を適用できるようになります。
6,000万円以下の部分 6,000万円超の部分 譲渡所得税率 10% 15% 復興所得税率 所得税×2.1% 住民税率 4% 5% 合計 14.21% 20.315%
相続空き家の敷地売却で使える3,000万円特別控除
相続した空き家の敷地売却で、以下の条件を満たすと、自宅用土地と同じく3,000万円を控除する特例を使うことが可能となります。
- 相続開始から数えて3年後の日が属する年の12月31日までの売却である
- 空き家が1981年(昭和56年)5月末までに建てられたものである
- 空き家に相続開始前に親等の被相続人が一人で住んでいた
- 相続の時以降、空き家やその取り壊し後の土地を事業用に貸し付けたりしていない
- <空き家を残して敷地と一緒に売却する場合>空き家が現行の新耐震基準に適合している
売却のパターンとしては、「空き家を残して土地と共に売る」、「空き家を取り壊して土地だけで売る」の2通りがあります。
ただ、空き家を残して売る場合、1981年以前の建築で新耐震基準に適合する建物があまりなく、条件を満たせなくなることが多いため、取り壊してから土地だけを売って特例を使うのが一般的となっています。
税金が発生する場合、支払うタイミングは?
以下の通り、譲渡所得税、復興所得税、住民税いずれも売却の翌年となります。
- 「譲渡所得税、復興所得税」→ 売却の翌年の2~3月
- 「住民税」→ 売却の翌年度6月以降
売却の時期によっては、引渡しから一年以上経ってからの支払いになることもあります。
売却後に手残りが出ても全ては使わず、事前に税額の目安を把握し、必要額についてしっかり手元に残しておくようにしましょう。
4. 「所有5年の自宅用土地を3千万円で売却した場合」のケーススタディ
実際に自宅用土地を売却した際のケーススタディを時系列に沿ってご説明していきます。
今回は、よくあるような以下の条件で売却した場合を想定しております。
<前提条件>
- 所有5年の自宅用土地の解体後売却
- 2017年6月1日取得、取得費の総額は2,500万円
- 2021年9月30日に引越した後2022年1月に解体して売り出し
- 2022年6月に3,000万円で売却し、2022年8月1日引渡し
- 仲介手数料は「3%+6万円+消費税10%」(契約時半分支払い)
- 契約手付金は売却価格の10%
- 固定資産税・都市計画税の年額合計12万円は全額支払い済み
- その他費用(印紙代1万円、解体費150万円、測量・境界確定費用50万円)
- 戻って来た費用(固都税清算金5万円)
4-1. 売却準備フェーズの費用の出入り
今回は、自宅解体後に測量と敷地境界確定をした上で更地で売却しているため、「解体費150万円、確定測量費50万円」を先に自己資金で工面しました。
- 出金額:▲200万円(解体費150万円+確定測量費50万円)
- 入金額:0円
- 合計額:▲200万円
4-2. 売出しフェーズの費用の出入り
複数の購入希望者の現地確認と交渉の結果、「売却価格3,000万円、2022年8月1日引渡し、契約手付金10%」という内容で売買契約を結びました。
買い主から契約手付金として300万円受け取り、その中から、仲介業者へ約定通り仲介手数料の半額52.8万円と契約書に貼った印紙代1万円を支払いました。
- 前回からの持ち越し金額:▲200万円
- 出金額:▲53.8万円(印紙代1万円+仲介手数料半額52.8万円)
- 入金額:300万円
- 合計額:46.2万円
4-3. 引渡しフェーズの費用の出入り
売り出し前に敷地の残置物等は既に処分していたため特別な引渡し準備内容はなく、約定通り2022年8月1日に決済・引渡しを行いました。
2022年度の固定資産税・都市計画税合計12万円はすでに全額支払い済みであったため、8月1日以降分の5ヶ月分(5万円)を買い主に清算してもらいました。
- 前回からの持ち越し金額:46.2万円
- 出金額:▲52.8万円(仲介手数料半額52.8万円)
- 入金額:2,705万円(売買残金2,700万円+固都税清算5万円)
- 合計額:2698.4万円
4-4. 納税フェーズの費用の出入り
実際に売却の一連の流れの中で最終的に手元に残ったお金は2698.4万円でしたが、税金を納める必要があるのではと思い、仲介業者経由で税理士に相談して税額を計算してもらいました。
今回2017年6月1日に取得した土地を2022年8月1日に手放しているため居住期間は5年2ヶ月ですが、税金計算上の所有期間は譲渡した年の1月1日時点で計算するため所有期間は4年7ヶ月となり「短期譲渡所得」に該当するとのことでした。
そうなると、合計39.63%という高額な税金がかかると思っていましたが、今回は自宅用の土地を売却し、「住まなくなってから3年以内」「解体から1年以内の譲渡契約」「その間に賃貸していない」という条件を満たすため、「居住用財産を売った場合の3,000万円の特別控除の特例」が使えるとのことで、税金上の譲渡益は発生せず税金はかからないとのことでした。
結果、最終的に自宅土地の売却により2698.4万円のお金が手元に残り、購入額から考えても193.4万円の利益が得られました。
<税額計算式>
「売却価格3,000万円−取得費2,500万円−売却費用306.6万円(仲介手数料+印紙代+解体費+確定測量費)」
=「193.4万円」
「193.4万円<特別控除3,000万円」
→税金は掛からない。
- 手元額:2698.4万円
- 税金額:0万円
- 合計額:2698.4万円
5. 土地は費用を抑えつつ少しでも高く売却するべき!
ポイントは、「仲介手数料」と「売出し価格」の2つ
これまでご説明してきた通り、土地売却には様々な費用がありますが、売り方次第ではあまり費用をかけずに売却することも可能です。
そして、その中で最も大きな金額を占める重要な費用が「仲介手数料」です。
売り主にとっての利益を最大化するためには、この「仲介手数料」を抑えながら、「売出し価格を高く」して、それでも買い主を見つけて来られる力のある仲介業者に依頼することが最も大切です。
5-1. 仲介手数料を安く抑えるには
前述の通り、仲介手数料は、何も言わなければほとんどの業者で上限価格設定されているため、必ず複数社比較しながら安くしてもらうよう交渉することが大切です。
交渉によっては、通常3%のところを2%で引き受けてもらえるといったようなケースも多く、仮に売却価格3,000万円の物件であればそれだけで税込み33万円も費用を抑えることができます。
そのため、まずは無料一括査定サービス等を活用して、複数の業者に売却価格の査定と共に媒介条件の提示をお願いするようにしましょう。
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地元業者も含めて幅広くリサーチしたい場合にはここもおすすめ
『HOME’S』は、大手の不動産業者以外にも地元の不動産業者の登録が非常に多く、登録業社数が3,800社以上と、数ある無料一括査定サービスの中でも最大規模の業者です。
先の『HOME4U』の2,300社以上と比較しても圧倒的な登録業社数と言えます。
特に地方等、大手の不動産業者以外にも、地元の不動産業者を含め幅広いリサーチがしたい人にはおすすめです。
HOME’S公式ホームページ「https://www.homes.co.jp/satei/」
5-2. 売出し価格を高くするには
結論から言うと、複数社から査定を取り、最も高い査定額(場合によってはそれ以上の価格)を基準に、その価格で売出す前提での条件をそれぞれの業者と交渉することが必須です。
物件の売出し価格は、売り主に決定権があるため、ある程度自分で決めることができます。
しかしながら、仲介業者は媒介契約を結ぶと買い主を見つる努力をする義務が発生するため、自分の実力以上の仕事や条件が割に合わない仕事は当然に受けません。
仲介業者からすると、「できるだけ条件の良い物件を相場より安く仲介することで、早く簡単に仕事が回せる」というメリットがあり、自分たちが無理なくまとめられる価格でしか査定しないという裏事情もあります。
そのような、業者都合の理由で売り主が損をするというのはあってはなりませんので、必ず複数社から査定を取ると共に自身でも相場を調べ、最低でも最高査定額(それが腑に落ちない場合には自身で調べた価格)を基準にそれぞれの業者と交渉するようにしましょう。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか。
「土地の売却にかかる費用」についての疑問や悩みが解消できたのではないでしょうか。
土地の売却は、事前にかかる費用や税金について把握をし、資金計画を立てておくことで、余裕を持ってのぞむことが可能となります。
本ページでは「土地の売却にかかる費用」について、重要なポイントは出来る限り網羅的にご紹介してきましたので、上記の内容をしっかりと理解した上で、後悔しない上手な売却を検討してみて下さい。
〈本ページでご紹介したサービス・業者〉
※参考プラン作成の依頼は『HOME4U土地活用』