引越し業者への心付け(チップ)は必要?作業員100人に聞いてわかった結論
「引越し業者に心付けは必要?」「いくら渡せばいい?」など、引越し業者への心付け(チップ)は必要なのか、いくら渡せばいいのか気になっていませんか?
引越しの日に、引越し業者への心付けは必要ありません。受け取りを禁止されている業者も多いので、何か渡したい時は、「飲み物」が喜ばれます。
このページでは、引越し業者で営業として4年間勤務していた筆者が、同僚などの作業スタッフ100人に心付けに関するアンケートを取り、下記の流れでまとめました。
最後まで読めば、引越し業者に心付けは渡すべきか、渡すとすれば何に気をつければいいかわかり、引越し業者に本当に気持ちよく作業をしてもらえるようになります。
1. 引越し業者に心付けは必要?100人に聞いた結果
私は、「引越し作業の差し入れ」について下記の3つの方法で引越しの作業員100人にアンケートをとりました。
- 私が勤務していた2つの引越し会社の同僚やその知人へのヒアリング(44人)
- ネット上でのアンケート(47人)
- SNSを使った聞き取り調査(9人)
その結果をこのページではまとめていきますが、長くなったので心付けに関する要点をまとめると下記の通りです。
- 渡さなくても問題なく、むしろ困らせることもある
- 何か渡すなら「飲み物」がベスト
- どうしても心付を渡したい時は、1,000円を分けて責任者に渡す
では、それぞれの観点をアンケート結果を交えながら解説していきます。
1-1. 引越し業者への心付けは渡さなくていい
心付けを渡すか悩んでいる方に知っておいていただきたいのは、引越し業者への心付けは不要ということです。
まず、アンケートの結果、心付けをもらう割合は、10回に1回程度という人がほとんどでした。
10~15%の方しか心付を渡しておらず、渡さない人がほとんどで、何も渡さなくても「ケチな人だ」とは思われません。
また、下記のように心付け(チップ)や差し入れの有無で、作業の質が変わることはほぼありません。
一部、「いつもより少しだけ頑張る」という人もいますが、大半の作業員は渡しても作業の質を変えることはありません。
また、「いつもより少しだけ頑張る」という人は、「5000円のチップをもらった場合」など明らかに高価な心付けをもらった時のみ対応を変える人ばかりでした。
相場である1,000円前後の心付や、簡単な差し入れでは、作業の質は変わらないと考えておきましょう。
1-2. 心付けは負担をかけてしまうこともある
引越し業者に何か渡す際に、お金や商品券などの金品はおすすめしません。
引越し業者の多くがスタッフに対して、引越し代金以外のお金(チップ)の受け取りを禁止しているからです。
実際に「お客様からもらって困ったものは?」という質問でも、現金(チップ)が最も多かったです。
上記の理由としては、「会社に禁止されている」が最も多く、他には下記のようなものもあがりました。
リーダーにまとめて渡していたのに、わけてもらえなかった(20代男性)
会社から禁止されていて、さらに分配でのトラブルの元にもなりますから、現金を渡すのはおすすめしません。
Q.引越し会社が心付け(チップ)の受け取りを禁止している理由は?
会社によっても異なりますが、下記の2つの理由のケースが多いです。
- 現金をもらうのが当たり前になると、もらえなかったときにモチベーションが落ちる
- スタッフへの給料を含めて料金を算出しているため、心付をもらうと割高になってしまう
もらったことが発覚すると、スタッフが怒られてしまう可能性もあるので、注意しましょう。
大手業者の実際の対応
大手業者は、ホームページ上で、下記のように「不要」と公言しています。
アート引越センター:
Q. 引越スタッフの方に、謝礼や食事の用意をした方がよいのでしょうか?
A. 当社引越作業スタッフへの心遣いは必要ございません。引用:アート引越センター
サカイ引越センター:
Q. 引越しスタッフの方に、心付けや食事を用意した方がいいのですか?
A. 当社のスタッフにはそのような心遣いはご不要です。引用:サカイ引越センター
1-3.どうしても現金を渡したい時に知っておくべきこと
とはいえ、どうしても現金(チップ)を渡したい時は、下記のポイントを意識しましょう。
- 心付の相場は「1,000円」
- 責任者に小分けして渡す
- タイミングは挨拶後がベスト
①心付の相場は「1,000円」
心付けの相場は1名あたり1,000円です。
相場以上の金額を無理して支払う必要はありませんし、反対に相場より極めて低い(1名2~300円)程度であれば渡さない方がいいです。
②責任者に小分けして渡す
渡す際は、現場の責任者にまとめて渡すようにしましょう。
受け取りを禁止されている場合、責任者の知らないところで他のスタッフに渡してしまったら、もしもの時に責任者に迷惑をかけます。
ただ、きちんと分配してもらえるよう、人数分の封筒やポチ袋に、小分けに入れて渡すようにしましょう。
また、この際、責任者に受け取りを遠慮されたら渡すのは避けるようにしましょう。
③タイミングは挨拶後がベスト
渡す場合は、挨拶後がベストです。
責任者が挨拶してくれますので、そのタイミングで自然に渡すことができます。
「本日はお願いします。」という言葉と合わせて渡すことで、気分良く作業に入ってもらえます。
1-4. 現金より渡すと喜ばれやすいものは?
現金よりも、飲み物の方が、もらう側を困らせることがないため、差し入れに選ぶべきなのは「飲み物」です。
まず、最近もらった差し入れで最も多かった回答が飲み物で、半数以上の人が差し入れに飲み物を渡しています。
ベテランのスタッフに詳しく聞いても、歴代の差し入れの半数以上は飲み物のようです。
また、もらって困りにくいのも飲み物で、先ほどの「もらって困った差し入れ」で選んだ人が少なかったのも飲み物です。
飲み物に困る方の理由は下記の通りで、選び方さえ気をつければ、困らせることがないため、迷惑をかけにくいです。
・炭酸が苦手なのに、炭酸をもらった(20代女性)
・のどが渇いていないのに、もらった飲み物を残せなかった(20代男性)
そもそも差し入れ自体をする人の割合は?
そもそも差し入れや心付けで何かしらのものを渡す人自体が半数程度です。
心付けはもちろん、飲み物や食べ物を渡さない人も半数いるため、無理して渡す必要は一切ありません。
1-5. 飲み物を渡すときの3つのコツ
アンケートを踏まえ、飲み物を渡す際は、以下のポイントを覚えておきましょう。
- ①キャップの付けられるものを選ぶ
- ②バランスよく渡すと喜ばれる
- ③タイミングは移動前
①キャップの付けられるものを選ぶ
ペットボトルなどキャップをつけて持ち運べる飲み物を選びましょう。
缶など一度開けたら飲み切らないといけないタイプのものは、持ち運びにくく、一度開けたら残しにくいため負担に感じさせてしまう可能性があります。
②バランスよく渡すと喜ばれる
下記のように引越し作業中にもらって嬉しい飲み物は人によって異なります。
そのため、複数のスタッフがいる場合は上記の飲み物をバランスよく購入し、まとめてリーダーに渡し、それぞれ好みの飲み物を選んでもらいましょう。
また、人数+2~3本渡すことで、スタッフも選びやすくなりますし、より感謝されます。
スタッフが1~2名の時は、好みが分かれにくい、お茶や水だけ渡すようにしましょう。
③渡すタイミングは移動前
飲み物を渡すタイミングは、荷物をトラックに積み込んだタイミングがベストです。
このタイミングに渡すことで、移動時間中に飲んでもらうことができますし、最悪好みの飲み物を渡せなくても気まずい思いをさせずに処分してもらえるからです。
また、移動前のタイミングを逃した場合は、同様の理由で引越し作業が終わった後に渡すようにしましょう。
2. 引越し業者にとって心付け以上に重要な4つのこと
以上のように、引越し業者への心付けは、以下のポイントを意識しましょう。
- 渡さなくても問題なく、むしろ困らせることもある
- 何か渡すなら「飲み物」がベスト
- どうしても心付を渡したい時は、1,000円を分けて責任者に渡す
また、アンケートで話を聞いていく中で、心付け以上に、下記の4つがスタッフのモチベーションを左右することがわかりました。
- 決められた準備をきちんとやってくれているか
- 挨拶は丁寧か
- どうしたいか?にはっきりと答えてくれるか
- 当日いきなり要望を伝えられないか
1つずつ紹介しますが、どれも心付けや差し入れ以上に重要ですから、忘れないようにしましょう。
2-1. 決められた準備はきちんとやってくれているか
「荷造りはあなたがしておく」など、事前準備が指定されているはずで、それをきちんとやっているかどうかは引越し業者にとって重要です。
約束の準備ができていないと、引越し業者がする作業や待ち時間が増え、予定以上に作業時間が長くなるため、スタッフのモチベーションは下がります。
引越し業者は1日に複数の現場を回ることもあり、作業が長引くと残業につながることもあるため、「準備不足」は最も嫌がられるポイントの一つです。
次の現場のことや、終了時間を考えて、スピード重視になり、作業が雑になることもあります。
「準備不足」は追加料金がかかったり、その日の作業を断られることもあるため、あなたにとってもマイナスです。
2-2. 挨拶は丁寧か
引越し業者が到着した際の挨拶は愛想良く、丁寧にしましょう。
「今日はよろしくお願いします。」と明るく伝えれば問題ありません。
第一印象で「いいお客さんだ」と最初に感じると、丁寧に作業したくなります。(30代男性)
上記のように、最初の挨拶でモチベーションが変わる人もいるので重要です。
2-3. どうしたいか?にはっきりと答えてくれるか
当日「どの家具をどの部屋にどう配置するか」聞かれますが、しっかりと答えるようにしましょう。
すぐに答えられなかったり、何度も変更をお願いすると、時間がかかるので引越し業者にとっては迷惑です。
完全に任せることもできますが、任せた配置に対して、後から要望を伝えると下記の印象を持たれることもあります。
どこに配置すればいいか、しっかりと答えてくれず、私たちに丸投げしておいて、後から移動を求められるとテンション下がりますね。(20代男性)
そのため、新居のレイアウトはきちんと決めておき、引越し業者からの質問にすぐに答えられるようにしましょう。
2-4. 当日いきなり要望を伝えられないか
当日、見積書にはない下記の要望を多く伝えられると、モチベーションが落ちるというスタッフは多かったです。
- 運びたい荷物を追加したい
- オプションを追加したい
準備と同様、引越し業者にとってすべき作業が増え、時間がかかるので、作業が雑になることもあります。
そのため、追加でお願いしたいことは、前もって引越し業者側に伝えて、把握してもらった上で当日来てもらいましょう。
ダンボールに入らない家具が追加になった場合、引越し業者にして欲しいこと(家具の解体など)が増えた場合は、前日までに電話で伝えましょう。
3. 引越し当日の作業をスムーズにする5つの事前準備
ここまでの話を踏まえ、引越し当日までに下記の準備をしておきましょう。
- ダンボールに入る荷物は全て詰める
- 冷蔵庫の掃除・霜取り
- 石油ストーブの空焚き
- 新居の鍵の受け取り
- 新居のレイアウト決定
3-1. ダンボールに入る荷物は全て詰める
やるべき人
- 全ての人(例外:荷造りを全て行ってもらうプランで依頼した方)
具体的にやること
- 全ての荷物を箱に詰める
引越し業者が来るまでに、ダンボールに入れられる物は全て梱包しておかなければいけません。
引越しまで使うと判断し、出していたものも、引越しのタイミングまでに全て詰めておくようにしましょう。
最悪、当日使う物は、紙袋などに入れて、あなたが運んでもいいので、引越し業者に運んで欲しいものは、すべてダンボールに詰めましょう。
3-2. 冷蔵庫の掃除・霜取り
やるべき人
- 冷蔵庫を運ぶ人
具体的にやること
- 冷蔵庫を空にして、霜取りを終えておく
冷蔵庫に物が入っていると運べないため、計画的に処分して、空にするようにしましょう。
また、前日には下記の手順で霜取りを行い、冷蔵庫の霜を綺麗に除去しておく必要があります。
- 冷蔵庫・冷凍庫を空にする
- 製氷機トレイの氷を捨てる
- コンセントを抜いて電源を落とす
- 溶けた霜で周囲が濡れないようにタオルを周囲に敷く
- 冷蔵庫を開けっぱなしにして、霜を溶かす
- 冷蔵庫の中を綺麗に拭き取る
- 蒸発皿※の水を捨てる
蒸発皿は、冷蔵庫の下部や背面にある、冷蔵庫の水を受ける皿のことです。
引用:シャープ
霜取りができていないと、運送中に溶け出し、他の荷物が濡れる恐れがあります。
「メーカー名+製品名」で検索すれば、取扱説明書がでてきますから、お持ちの冷蔵庫の霜取り方法がわからなければ調べましょう。
3-3. 石油ストーブの空焚き
やるべき人
- 石油ストーブ・ファンヒーターを運ぶ人
具体的にやること
- 石油ストーブ・ファンヒーターの灯油をなくす
石油ストーブやファンヒーターに灯油が入ったままだと運べないため、取扱説明書を確認しながら空焚きを行い、灯油を空にしましょう。
多くの石油ストーブ・ファンヒーターが、「メーカー名+製品名」で検索すれば説明書が見れるため説明書を確認しましょう。
大きくすべきこととしては、ストーブを付け放置、灯油がなくなり、自然に消えるのを待つことです。
3-4. 新居の鍵の受け取り
やるべき人
- 次の家が賃貸の人
具体的にやること
- 部屋の鍵を事前に受け取る
次の家には鍵がかかっているため、引越し業者が新居に着くまでのどこかのタイミングで鍵を受け取っておく必要があります。
鍵が開かないと、引越し業者を待たせることになってしまうため、事前に不動産会社の指定の方法で受け取りましょう。
遠方に引越す方など、荷物の搬入当日まで鍵を受け取れない方は、当日のスケジュールをしっかりと組み、引越し業者を待たせることがないようにしましょう。
3-5. 新居のレイアウト決定
やるべき人
- 全ての人
具体的にやること
- 新居にどの家具をどう置くか決めておく
引越しの際、業者から「これどこに置きますか?」「どの向きで置きますか?」と聞かれます。
スムーズに引越しを終えるためにも、事前にどこに何をおくか、どの向きで置くかを決めておきましょう。
また、時間があれば、事前に部屋のサイズを測定し、「プランナー5D(iOS/ Android)」など家具の配置がシミュレーションできるアプリできっちり配置を決めておきましょう。
4. まとめ
引越し業者への心付けに関して、いくら渡すべきか、どうやって渡すべきか紹介してきましたがいかがでしたか?
引越しの際の心付けに関して、簡潔にまとめると下記の通りです。
- 渡さなくても問題なく、むしろ困らせることもある
- 何か渡すなら「飲み物」がベスト
- どうしても心付を渡したい時は、1,000円を分けて責任者に渡す
ただし、下記の点の方が引越し業者にとっては重要で、心付けや、いい差し入れを渡しても下記ができていないと評価はマイナスです。
- 決められた準備をきちんとやってくれているか
- 挨拶は丁寧か
- どうしたいか?にはっきりと答えてくれるか
- 当日いきなり要望を伝えられないか
そのため、心付けや差し入れ以上に上記の点を意識して、当日までの準備や当日の立ち会いを行いましょう。
このページがあなたの引越しのお役に立てることを心から祈っています。